2001年度 前期第5回 細胞生物学セミナー

日時:5月29日(火) 17:00から

場所:理学部2号館3階セミナー室

 

リアルタイムでエチレンの影響を見た!!

In the early response of Arabidopsis roots to ethylene, cell elongation is up- and down-  regulated and uncoupled from differentiation

 

Jie Le, Filip Vandenbussche, Dominique Van Der Straeten, and Jean-Pierre Verbelen (2001)

Plant Physiol. 125:519-522

 

 エチレンがシロイヌナズナ(Arabidopsis)の根に引き起こす作用としては、伸長抑制作用、非根毛形成細胞に対する根毛形成の誘導、肥大成長が知られている。しかしながら、これらは高濃度で長時間、エチレン処理した場合に見られる作用であり、自然条件下ではより普通の反応であると考えられる、低濃度の場合に初期に見られる細胞伸長の変化はわかっていない。そこで筆者らはシロイヌナズナの主根における、エチレンの表皮細胞に対する作用の初期反応(数分以内)を調べた。

 シロイヌナズナの根の表皮細胞は、周囲の環境のエチレン濃度のわずかな変化で伸長調節が起こる。リアルタイムに細胞伸長を表すことができるパラメーターとして、表皮の根毛形成細胞に根毛の膨らみが生じた細胞の長さ(LEH)という数値を用いた。生長中の根が突然エチレンにさらされたとき、LEHより長いかもしくは同程度の細胞はすぐに伸長生長が止まるが、根端に近くLEHより短い細胞はLEHの長さに近づくまで伸長を続けたがその後止まることがわかり、つまり細胞伸長に見られる影響は二元的であった。またLEHはエチレンの濃度に依存して短くなった。エチレンの前駆体であるACCを加えた場合、LEHは時間経過に伴い短くなったが、その変化は処理後20分で見られた。また阻害剤であるAVGを与えたところ、LEHが長くなった。これらのことから、生長中の根の内生的なエチレン濃度のわずかな変化で細胞伸長が調節されていることがわかった。

 細胞分化の指標である根毛の膨らみは、根毛形成細胞の細胞列において正確に27分ごとに形成されたが、この時間はエチレン処理(1μL/L)をした場合でも変わらなかったことから、初期の反応においては細胞分化に対して影響はないことがわかった。

 

興味のある方はぜひご参加ください。               松田香織