2001年度 後期第8回 細胞生物学セミナー
日時:11月27日 (火) 17:00から
場所:理学部2号館3階セミナー室
The Arabidopsis eer1
Mutant Has Enhanced Ethylene Respons
in the Hypocotyl and
Stem
Paul B. Larsen and Caren Chang
Piant Physiology(2001)125:1061-1073
エチレンは茎・根の肥大成長を促進する作用、伸長成長を抑制する作用や果実の後熟を誘導する作用がよく知られている気体の植物ホルモンである。しかし、植物はこれら以外にも発芽から老化までに及ぶ多くの調節を受けている。そこで筆者らは新たに得られたエチレン作用の分子機構を用いてシロイヌナズナ(Arabidopsis) のeer(enhanced ethylene-response)突然変異体を分析した。
突然変異体eer1は胚軸と茎のエチレンに対する感受性が強いと考えられている。暗条件・外因性エチレン欠乏の状態で育てたeer1の胚軸は野生型に比べ肥大、収縮していた。しかし、eer1の表現型はエチレン生合成抑制剤である1-aminoethoxyvinyl-glycine(AVG)によって抑制され、また10μ
M AVG処理はエチレンの過剰合成を効果的に抑制した。AVG処理によりエチレンの過剰合成を抑制されたeer1の胚軸は野生型に比べ肥大、収縮した。つまり、eer1の表現型は単にエチレンの過剰合成によるものではなく、低レベルの内因性エチレンに対して非常に敏感な感受性を持っていると考えられる。しかし弱いエチレン活性の認められるプロピレンと拮抗的な阻害作用を持つ2,5-ノルボルナジエンに対する感受性も高められた。またeer1の成熟した植物体では、シロイヌナズナでは以前に報告されていないエチレン依存性の茎の異常な肥大成長が見られた。
eer1の表現型はエチレンに対する感受性のない突然変異体etr1-1との交配によって遺伝的発生が完全に抑制される。野生型との交配によって得られたF1は全て野生型の表現型を示し、F1を自家受精させて得られたF2は3:1の比率で野生型とeer1を示すことからもeer1の表現型は劣性であることが示唆された。
さらに筆者らが発見した突然変異体eer1を分析することで野生型EER1の生成物が胚軸と茎でエチレン作用を阻害する作用があることが示唆された。
興味のある方は是非ご参加下さい。
松田香織