2002年度前期第5回細胞生物学セミナー

日時:5月14日(火) 17:00から

場所:ゼミ棟・C室

Celluler Basis of Hypocotyl Growth in Arabidopsis thaliana

Emmanuel Gendreau,Jan Traas,Thierry Desnos,Olivier Grandjean,Michel Caboche,and Herman Hofte

Plant Physiol.(1997) 114: 295-305

 細胞の伸長という現象については、植物形態学では重要な位置を占めているにもかかわらず、その分子機構については私達の理解が乏しいのが現状である。シロイヌナズナの胚軸は細胞の伸長における光や生長因子の効果を調べるモデルとして広く使用されていて、光の影響による形態的変化が研究されている。暗所で生育させた芽生えは暗形態形成をする。芽生えは黄化が起こり、子葉は閉じたままで頂点にフックを形成する。また、根の生長は衰え、胚軸は促進される。明所で生育させた芽生えは光形態形成をする。黄化は起こらず、子葉は開いて大きくなり、葉の発達が生じる。光合成の器官が備えられ、胚軸の生長は衰える。しかし、明所で生育した芽生えと、暗所で生育した芽生えの胚軸の細胞の形態や、細胞レベルでの生長の様子について体系的な比較・対照の報告は成されていない。

 そこで著者らは走査電子顕微鏡を用いて暗形態形成と光形態形成の細胞レベルでの胚軸の成長のメカニズムを明らかにする研究をした。明所で育てた芽生え・暗所で育てた芽生えともに、皮層細胞や表皮細胞における細胞分裂は胚軸の生長には重要な意味を持たないという確証を得、白色化した個体と白色化していない個体の細胞伸長生長における特徴的な三つの違いを明らかにした。

 第一に、表皮細胞において、明所で育てた芽生えと暗所で育てた芽生えに特徴的な分化の違いが観察されたこと。第二に伸長生長時に明所で育てた芽生えの胚軸の細胞内では二段階の染色質の倍加が起こっており、暗所で育てた芽生えの胚軸の細胞内ではさらにもう一段階の倍加が起こっていること。第三に、胚軸において暗所で育てた芽生えでは表皮細胞の時間的・空間的な生長の勾配が胚軸の中に見られたのとは対照的に、明所で育てた芽生えの表皮細胞は連続した一定の生長を行ったことである。

                          興味のある方は、是非ご参加下さい。