2002年度前期第7回細胞生物学セミナー

(日時:6月4日 17:00~ 場所:ゼミ棟室)

Modulation of the Degree and Pattern of Methyl-esterification of

Pectic Homogalacturonan in Plant Cell Walls

IMPLICATIONS FOR PECTIN METHYL ESTERASE ACTION,

MATRIX PROPERTIES, AND CELL ADHESION*

William G. T. Willats, Caroline Orfila, Gerrit Limberg, Hans Christian Buchholti,Gert-Jan W. M. van Alebeek, Alphons G. J. Voragen, Susan E. Marcus,Tove M. I. E. Christensen, Jørn D. Mikkelsen, Brent S. Murray, and J. Paul Knox

J.Biol.Chem 276(22):19404-19413(2001)

 

細胞壁を構成する成分には大きく分けて三つある、多糖類、タンパク質、リグニンである。しかし、成長中の細胞壁に限って言えばタンパク質、リグニンはあまり存在せず、その主要な成分は多糖類である。つまり、成長中の細胞壁の物理的な構築や、生理的な活性は多糖類に依存する部分が大きいと考えられる。さらに多糖類は、セルロース、酸性多糖類(ペクチン)、中性多糖類(ヘミセルロース)の三つのグループに分けられる。セルロース、ヘミセルロースはその物理的強固さに大きく関わっていて、ガラクツロン酸が高度の脱水縮合を繰り返した多糖(Homogalacturonan=HG)を主成分とするペクチンは、細胞壁同士の接着剤として働くことが知られているが、その成分は分子量、メチルエステル化またはアセチル化の程度、二価イオン含量などで様々な種類があり、それぞれが相互転換することにより、その性質は変化して、結果的に細胞壁の物理的、生理学的特徴にも関与していると考えられている。ペクチンの主成分であるHGが細胞壁へ輸送されるときには、そのカルボキシル基の多くがメチルエステル化された状態にある。しかし、その後で、同様に細胞壁中に存在する、ガラクツロン酸のメチルエステル基を分解する働きを持った、ペクチンメチルエステラーゼ(PMEs)によって加水分解されることによって、メチルエステル化の程度やパターンは変化する。また、PMEsはその働きによって、いくつかの種類があると考えられているが明らかにはなっていない。HGの持つカルボキシル基の、カルシウムを介した他のHGとのイオン結合は、見かけの分子量が大きい集団の形成を可能とし、中程度に固化したゲルを形成して、これが細胞壁同士の接着を担っている。しかし、PMEsによってメチルエステル基が加水分解されたもののなかでは、その脱エステル化の程度、パターンにより、集団を形成するものと、しないものとに分かれることが知られている。そこで著者らは、エンドウにおいて、PAM1、JIM5、LM7、といった、それぞれHGを抗原としながらも、条件の異なる抗原をもったモノクローナル抗体を用いた間接蛍光抗体法によって、集団を形成するものとしないものとが細胞壁の別の領域で産生されていることを突き止め、その形成位置から、PMEsの働きが、細胞壁間の接着の制御に大きく関与していることを示唆することができた。  興味あるかたはぜひご参加ください  土屋 紀之