2002年度後期 第12回 細胞生物学セミナー

日時:12月12日(火) 17:00〜

場所:ゼミ棟 C室

 

A xylanase, AtXyn1, is Predominantly Expressed in Vascular Bundles

and Four Putative Xylanase Genes were Identified in the Arabidopsis

thaliana Genome

Masashi Suzuki,Atsushi Kato,Noriko Nagata and Yoshibumi Komeda

Plant Cell Physiol.43(7):759-767(2002)

 

  キシラナーゼは単糖キシロースが直鎖状に連なった構造を有する不溶性多糖のキシランを加水分解する酵素である。植物細胞の二次壁は主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成されるが、そのヘミセルロースの主要成分の一つがキシランであり、キシラナーゼは植物体の構築に大きく関わっていると考えられている。しかし、今まで植物においてキシナーゼの詳しい研究がなされておらず、その知見の多くが細菌においてのものであった。そこで著者らはシロイヌナズナ(Arabidopsis thariana)  からキシラナーゼをコードしていると思われる遺伝子をクローニングし、それから得られるタンパク質 AtXyn1 について調べた。まず AtXyn1 と GFPとの融合タンパク質を作製し、細胞内におけるAtXyn1 の局在を調たところ細胞壁に多く存在することが、また次に AtXyn1 遺伝子のプロモターと GUS 遺伝子をつないだ AtXyn1::GUS を用いて Atxyn1遺伝子の発現場所を調べたとろ、GUS 染色は道管を除く維管束において見られた。AtXyn1 の活性部位が 糖加水分解酵素のFamily 10 に属するものであることからも、AtXyn1 はキシラナーゼ活性を持ち、維管束における二次壁の再編成や修飾に関わり、さらには植物全体の発達へ関与していることが示唆された。また、AtXyn1 の推定アミノ酸配列を詳しく調べたところ、 触媒領域の他にセルラーゼなどにみられるセルロース結合部位と良く似た構造 (CBD-like region) を持つことがわかった、植物においてこのような構造を持つキシラナーゼの発見はこれが初めてである。さらに、AtXyn1 に加えて4つのキシラナーゼをコードすると思われる遺伝子を見いだし、それぞれから作られるタンパク質を AtXyn2〜5と名付けた。このうち AtXyn2,3 においては AtXyn1 と同様に(CBD-like region) を持ち触媒領域とともに AtXyn1と高い相同性を示した。

 キシランは様々な時期、場所での存在が確認されている。今現在、シロイヌナズナにどのようなキシランが存在するかは明らかになっていないが、それぞれの AtXyn がどのようなキシランに特異的に結合するのかを調べることによって、今後 AtXyn の働きの解明に役立つと考えられる。   

                                   興味をもたれた方はぜひ御参加下さい   土屋 紀之