2003年度 前期1回 細胞生物学セミナー
日時:4月22日(火)16:00~
場所:総合棟6階 クリエーションルーム
Arabidopsis nph1 and npl1:blue light receptors
that mediate both phototoropism and chrplloplast relocation
Tetsuya Sakai, Takatoshi Kagawa, Msahiro Ksahara,
Trevor E. Swartz, Jhon M. Christie, Winslow R. Briggs,Masamitsu Wada, and
Kiyotaka Okada
PNAS Vol. 98: no. 12: 6969-6974
光は植物の成長、発達に関わる重要な環境因子である。光によって起こる植物の反応は脱黄化、開花の開始、光屈せ位、葉緑体の移動などがあるが、UB-A(320-390nm)および青色光(390-500nm)は葉緑体の移動と光屈性に関わっている。高等植物の青色光受容体はシロイヌナズナの突然変異体を用いた研究によって明らかになってきた。高等植物の青色光受容体は、現在、criptochrome1
(cry1), cryptochrome2 (cry2), phototoropin (nph1), npl1 (nph1-like1)が分かっている。nph1
は光屈性を行う青色光受容体で、根と胚軸両方において低強度の光照射に応答して光屈性を行っている。Phototoropinは、120kDの膜結合型蛋白で、C末端にセリン、スレオニンキナーゼドメインを、N末端にLOV1,
LOV2ドメインを持つ。2つのLOVドメインにFMN(flavin mononucleotie)1分子ずつ結合し、FMNが結合したLOVドメインは、UV-A青色光領域にピークを持つ。NPH1に欠陥のある突然変異体nph1は強度の青色光照射下で通常の光屈性を行うという報告があり、これは新たな光屈性の受容体の存在を暗示している。この受容体の有力な候補はnph1と相同なnpl1である。Npl1はシロイヌナズナにおいて強度の青色光照射による葉緑体の運動の応答に欠陥がある。著者らはnph1とnpl1を用いて、2つの青色光受容体の比較を行った。
昆虫培養細胞にこれらの遺伝子を導入した時、光依存的な事故リン酸化反応を進めた。このことから、npl1もまた光受容体キナーゼとして働くことが示唆された。さらにnoh1npl1突然変異体において、低強度においても高強度においても光屈性の応答性が減少した。このことから、npl1は高強度の照射時に第二の青色光受容体として働き、nph1と部分的に機能の重複が見られることが分かった。さらに、低強度の照射の応答による葉緑体の蓄積と、nph1npl1ダブルミュータントにおける高強度の照射による葉緑体の運動を検討した。この結果は、nph1とnpl1は光屈性と葉緑体の組み換えの2つの異なった応答に対する機能が重複していることを示唆するものだった。
興味のある方は是非参加してください。 藤林 茂隆