2003年度 前期1,2回 細胞生物学セミナー
日時:4月22日(火)16:30~
場所:総合棟6階 クリエーションルーム
Regulation of abscisic acid signaling by the ethylene
response pathway in Arabidopsis
Majid Ghassemlan, Eiji Nambara, Sean Cutler, Hiroshi
Kawaide, Yuji Kamiya, and Peter McCourt
The Plant Cell Vol. 12 : 1117-1126 (2000)
アブシジン酸は種子の休眠や乾燥への応答など、植物の幅広い調節を行っている。これらの生理作用はアブシジン酸内生量と大きく関係している場合が多い。逆にエチレンは種子の休眠を打破し、発芽を誘導する作用を持つ。最近、幾つかのホルモン応答性突然変異体は一つのホルモンだけでなく多くのホルモンに対する感受性を変化させているということが報告されている。
著者らはシロイヌナズナのアブシジン酸シグナル応答の阻害的な調節因子を決定するという研究において、アブシジン酸高感受性突然変異体の一つのera3を同定した。そしてera3の生化学的、分子学的解析により、原因遺伝子が単離され、配列を決定したところ、エチレンのシグナル伝達を担うEIN2遺伝子座の対立遺伝子であることが明らかになった。加えて、一連のエチレンシグナル伝達の段階をコードする様々な遺伝子の突然変異も、アブシジン酸に多する種子と根の反応に変化を与えることが示唆された。
そこで、2つのホルモンがそれぞれの植物の成長と発達に与える特異的な作用にどのような影響を与えるか検討した。シロイヌナズナ野生型において、アブシジン酸はエチレンによる根の伸長生長阻害と同様の作用を示す。実際、エチレン非感受性突然変異体のein2およびetr1は、アブシジン酸高感受性を示し、休眠中の種子の増加とアブシジン酸を過剰に蓄積した。しかし、根はアブシジン酸に対して感受性が低く、アブシジン酸非感受性突然変異体abi1-1と同程度の伸長成長促進が観察された。逆にエチレンを与えなくてもエチレン反応を示す突然変異体のctr1は、アブシジン酸感受性が低下すると報告されている。
これらの結果より、種子発芽におけるエチレンとアブシジン酸の相反する作用を支持するとともに、エチレンはアブシジン酸活性の阻害的な調節因子であると示唆された。しかし根においては、エチレン不在化ではアブシジン酸が根の伸長生長を阻害し、エチレン存在下ではアブシジン酸には応答せず、エチレンが伸長生長を阻害するということが考えられる。
興味のある方は是非ご参加ください。 松田 香織