2003年度 前期第7回 細胞生物学セミナー
日時 2003年5月20日(火) 16:30~
場所 総合研究棟6F クリエイションルーム
IMPLICATION
FOR THE SPACE RESERCH
Y.Negishi, A.Hashiomoto,
M.Tsushima, C.Dorbrota,
M.Yamashita,
T.Nakamura
Adv. Space Res. 23:2029-2032(1999)
磁場は地球上の植物にとって逃れられない環境要因である。しかしながら、それによる植物の生長への影響はよく分かっていない。どのように磁場が植物に影響を与えるかを調べるために、アラスカエンドウの芽生えを低磁場(Low Magnetic Field、以下LMFと略す)環境下と、通常の地球磁場環境下で成育させた。磁気シールドボックスとコントロールボックスで、暗所芽生えを2日成育させた。また、アミロプラストの沈殿作用を、二つの条件下で育てられた暗所芽生えの上胚軸で調査した。
結果、上胚軸の伸長生長はLMF環境下で促進された。伸長生長は上胚軸の中央部で顕著であった。細胞伸長と細胞液の浸透圧上昇が、LMF環境下で生育した芽生えの表皮細胞でみられた。重力が1Gであるとき、LMF環境下と通常地球磁場環境下で培養されたものの上胚軸は、同様にまっすぐ上向きに生長し、アミロプラストは沈殿する。しかしながら、三次元クリノスタットによる擬似微小重力下では、上胚軸と細胞の伸長生長は促進された。さらに、擬似微小重力下では、上胚軸は屈曲し、アミロプラストは細胞内に分散した。
1GでのLMF環境下で見られなかったことにより、アミロプラストの分散は、三次元クリノローテーションによる擬似微小重力下での、上胚軸生長の姿勢制御と関連があると考えられる。細胞伸長の増加が一般にLMF環境下と擬似微小重力環境下でともに見られたことにより、三次元クリノスタット上での全ての伸長は擬似微小磁場に起因するかもしれない。すなわちクリノスタットでの実験結果は、無作為な磁場とともにある、無作為な重力ベクトルに基づくものである。我々の結果は宇宙空間を使った実験が、磁気生物学の研究にも使えるということを示した。宇宙実験では、植物への重力といった主要な環境要因の影響を、磁力による影響をよりはっきりと明らかにするためににするため、無効に、または制御できるからである。
興味のある方は是非ご来聴ください。 三森 裕吉