2003年度 前期第3・4回 細胞生物学セミナー

日時:5月27日 (火) 16:30〜

場所:総合研究棟6F クリエーションルーム

The eli1 mutation reverals a link between cell expansion and secondary cell wall formation in Aravidopsis thaliana

Cano-Delgado, Ana I., Metzlaff, Karin, Bevan, M. W. (2000)

Development : 127: 3395-3403

 

 細胞壁の形成と分化は、植物の形態形成において重要な役割をしている。一般的な細胞壁のタイプは2つに区別することができ、細胞が拡張中に合成される薄い一次細胞壁と、一次壁と原形質膜の間にある厚い壁の二次壁である。二次壁の形態は特別な細胞に限定され、機械的な力や空中での構造に対してサポートとするための固さや輸送バリアのための疎水性物質をもっている。植物の一次壁は主にセルロースミクロフィブリルとヘミセルロースの多糖マトリックス、ペクチン質と蛋白質で構成されている。セルロースミクロフィブリルやそれら複合体、他の細胞壁との相互作用の機構は広範囲で力学的なネットワークになる。そしてエンドグルカナーゼやキシログルカン、エクスパンシンなどの細胞壁修飾酵素の作用によって修正することができる。

 二次細胞壁は木部細胞の発達などにおいて、良く研究されている。今回著者らはシロイヌナズナの根や胚軸において細胞壁の観察をした。ectopic lignification突然変異体 (eli)は植物の細胞の至る所に木化の変異を示す。eli1においては細胞の拡張現象により、木部細胞に問題を生じた。表現型の解析では、細胞拡張の変異体であるeli1 lit (lions tail)のダブルミュータントの表現型と併せて考えると、eli1欠損のよう植物は二次壁の形成開始が不適当で、続いて起こる異常な細胞の木化は、変異した細胞の拡張が原因で起こるのではないかと考えられた。またeli1wol (woodenleg)の間の相互作用は木部の細胞を変化させ、ELI1の連続的な木部のつながりを促進した。そしてELI1が初期の根と他の組織の細胞伸長領域の中で機能しているということも明らかになった。

 

 興味のある方は是非ご来聴下さい。           中林 いづみ