2003年度 前期10回 細胞生物学セミナー
日時:10月17日(火)16:30~
場所:総合棟6階 クリエーションルーム
SPINDLY Is a Nuclear-Localized Repressor of
Gebberellin Signal Transduction Expressed Theroughout the Plant
Stephen M. Swain, Tong- Seung Tseng, Tina M.
Thornson, Manjula Gopalraj. And Neil E.
Olsqewski
Plant Physiology. 129 : 605-615 (2002)
ジベレリンは高等植物の発芽、伸長生長、花芽形成などを制御するホルモンである。近年の分子遺伝学の発展に伴い、ジベレリンの情報伝達の機構は徐々に明らかにされてきた。これまでの研究から、シロイヌナズナSPYはO-linked N-acetyl-glucosamine transferase(糖鎖転移酵素)をコードしており、ジベレリン情報伝達の抑制遺伝子として機能することが知られている。シロイヌナズナとオオムギにおいて、SPYが正常なジベレリン応答に必要であることはほぼ明らかであるがspy変異体の表現型はSPYが植物の成長においてさらなる新しい作用を持つ可能性を示している。
また、in situ hybridizationによって、SPY mRNAの局在を調べる実験はこれまでにも行われてはいるが、それは芽生えと生長中の花に関してのみである。生長の全課程を通してのSPYの発現は未だ未調査であり、SPY発現が環境やホルモンによる調節を受けるのかどうかも分かっていない。また、SPY蛋白質の配列は明らかな細胞内局在シグナルを含んでおらず、SPYの細胞内での存在場所はこれまで決定づけられてこなかった。
今回、著者らは、SPY遺伝子の発現とSPY蛋白質の細胞内局在を明らかにするためにシロイヌナズナとカリフラワーを用いて幾つかの実験をおこなった。SPY::GUS1レポーター遺伝子を用いた実験はSPYが根で発煙している事実を明らかにした。また、SPYプロモーター領域が欠損したSPY::GUS2レポーター遺伝子は不活性であったことことから、SPYの発現にはexon1とintronの一方、またはその両方の配列が必要であると考えられた。一方、SPY-GFP融合蛋白質を用いた実験は、SPY蛋白質の核での局在を明らかにした。このことは、ジベレリン情報伝達に関わる他の因子が核に存在していること、また、SPYのジベレリン抑制因子としての機能はSPYとこれらの核蛋白質またはグルコサミン修飾体との相互作用の元で発揮されることを示唆している。
興味のある方は是非ご参加下さい 壺井 愛子