2003年度前期 第13・14回 細胞生物学セミナー

日時:7月1日(火) 16:30~

場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム

 

CRABS CROW and SPATULA, two Arabidopsis genes that control carpel development in parallel with AGAMOUS

John Alvarez and David R. Smyth

Development:126,2377-2386(1999)

 

花は茎頂分裂組織に由来する少数の細胞から発生する。最初、花の分裂組織は活発な細胞分裂を行ないながら、徐々に分化していく。この分化過程で起こるパターン形成と細胞増殖の関係は、様々な遺伝子の相互作用からつくりだされる。

 花は通常、がく、花弁、雄ずい、雌ずいが同心円上に配置する構造をもっており、これらの器官の形質(identity)は、花のホメオティック遺伝子によって決定されている。

これらの遺伝子は、ABCクラスとよばれる3つのクラスに分けることができる。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の花の変異株を用いた解析から、花の器官形質決定にはA,B,Cというそれぞれ異なった遺伝子の組み合わせが重要で、Aのみの発現ではガク、AとBが発現すると花弁、BとCが発現すると雄ずい、Cのみが発現すると雌ずい(心皮)が形成されるという「ABCモデル」が提唱されている。ABCモデルは、3つのホメオティック遺伝子群を3つグループに分け、各クラスが2つの隣り合ったwhorl(花輪)に機能することを基盤として立てられたものである。シロイヌナズナの花は、他の多くの花と同様に4つのwhorlからなっている。

 心皮形成に関与するクラスC遺伝子では、AGAMOUS(AG)が知られており、whorl3とwhorl4に働いていることが分かっている。しかし、最近このAGのクラスC機能を補助する遺伝子の突然変異体が2つ単離された。これらは、CRABS CROW(CRC)とSPATULA(SPT)とよばれ、AGの雌ずい形質を決定する機能が完全ではなく、心皮様の形質を持った器官が残ることから、心皮形成に深く関与することが示唆されていた。さらに、AGAMOUS(ag)とAPETALA2(ap2)の二重突然変異体によって、本来ならwhorl4に発達するはずの心皮に似た器官がwhorl1にできることから、この残留的な心皮形質はCRABS CROW(CRC)とSPATULA(SPT)遺伝子の働きによることが明らかにされた。 

著者らは、CRCとSPTに注目し、これらの変異体crc-1,spt-2,spt-2-2とAGAMOUS 、APETALA2の変異体ag-1 ,pi-1の全5種類を用いて、単一変異体、二重変異体、三重変異体、四重変異体を作成した。そして、それらの組み合わせから形成される花の心皮様形質を、走査型電子顕微鏡と光学顕微鏡で観察し、crcとsptが心皮形成にどのように関与しているのかを調べた。

 

興味のある方は是非ご来聴ください。                        川田梨恵子