2003年度 前期15回 細胞生物学セミナー

日時:7月8日(火)10:30~

場所:総合棟6階 クリエーションルーム

Interactions between abscisic acid and ethylene signaling cascades

Nathalle Beaudoin, Carine Serizet, Francoise Gosti, and Jerome Giraudat

Plant Cell,12, 1103-1115 (2000)

 

 シロイヌナズナのアブシジン酸(ABA)応答に以上を持つ突然変異の分析は、ABA存在下における種子の発芽を基にして行われてきた。まず、著者らはABAの感受性を調節する特別な遺伝子座を確認するため、発芽がABAによって阻害されにくいという形質を示すABA非感受性突然変異体abi1-1EMS処理し、野生型ほどではないが発芽が阻害されるline H3abi1-1 ein2-45二重突然変異体であることが明らかになった。ctr1-10、ein2-45二重突然変異体はそれぞれABA感受性が野生型とは異なり、恒常的にエチレン応答形態を示すctr1-1や、エチレン非感受性突然変異体のein2-1と類似したABA感受性を示した。つまり、ABA応答に関する突然変異体に加え、エチレン応答が変化する突然変異が起こった突然変異体は、ABA感受性にさらに影響を与えることが示唆された。この調節についてはまだ明らかになってはいないが、この結果はエチレンがABAの影響に対抗することによって種子の休眠の度合いを調節するという考えを指示する。

 また、他の器官でABAとエチレンの相互作用を観察した。乾燥した状況の葉において、野生型とein2-45ABAによる機構の調節に変化は見られなかった。しかし、野生型とein2-45の根においてはABAの作用に大きな違いが見られた。ein2-45の種子はABAの感受性が高まっていたのに対して、根はABAの感受性が著しく低下していた。この結果は種子と根においてはABAとエチレンのシグナル伝達のカスケードの間に重要な相互作用が存在することを示唆した。ホルモンシグナル伝達のカスケードは植物の器官と発達段階に依存し、複雑に相互作用すると考えられる。

 

興味のある方は是非ご参加ください。 松田 香織