2003年度 前期17回 細胞生物学セミナー
日時:7月22日(火)16:30~
場所:総合棟6階 クリエーションルーム
petit1, a Conditional Growth Mutant of Arabidopsis
Defective in Sucrose-Dependent Elongation Grouwth
Tetsuya Kurata and Kotaro T. Yamamoto (1988)
Plant Physiol. 118:793-810
細胞伸長のプロセスは、植物の形態形成の過程で決定される。そのプロセスは、それぞれ固有のもしくは外因性の要因によって調節されていると考えられていた。しかし、生理学や生化学の研究は、そのプロセスに関わる多くの要因を明らかにした。シロイヌナズナにおいて、細胞壁構成要素に影響を及ぼし、矮小を示すmur1変異体は、細胞壁多糖(Fuc)に完全に欠陥があった。mur1の伸長中の茎では、縦方向に引き伸ばして、一次細胞壁を壊すために必要な力は、野生型よりも小さく、本来備わっている細胞壁の特性のメカニズムに欠損がある。また、細胞壁の単糖の組成に複合の変異をもった変異体は、矮小になることも分かっている。
今回実験試料として用いたシロイヌナズナの胚軸は、細胞の伸長の分析に非常に適している。なぜなら、胚軸は細胞分裂なしに伸長するからである。今回著者らは、胚軸の伸長に変異のある、petit1(pet1)という劣勢の変異体を単離した。Pet1変異体の胚軸は、細胞が短くなることにより短くなっていた。また、pet1において胚軸の伸長中の細胞は変形しており、伸長中の根や、花茎、花弁、小柄、長角花などに変異が見られる。それらの変異は、オーキシン、ジベレリン、ブラシノステロイド、もしくは、エチレン生合成のインヒビターを投与しても回復できなかった。
また、pet1の短い胚軸は、ショ糖を含む培地でのみ見られ、胚軸の伸長に影響を与えていることが分かった。そして、pet1は溶解性の糖を野生型よりも多く蓄積しており、こと使用や胚軸では強いヨウ素反応を示した。
以上の結果から、伸長中の細胞壁の正しい組み立てに関わると考えられるショ糖による細胞伸長のコントロールにPETIT1が関わることが示唆された。
興味のある方は是非ご参加下さい。 中林 いづみ