2003年度 前期18回 細胞生物学セミナー

日時:7月22日(火)16:30~

場所:総合棟6階 クリエーションルーム

in vitro activities of four xyloglucan endotransglycosylases from Arabidopsis

Paul Campbell and Janet Braam

The Plant Journal Volume 18 Issue 4 Page 371 May 1999

 

 細胞壁合成と再編成は、細胞の形、さらには植物の成長に強く影響を与える。どのようにして細胞壁合成と再編が起こるかの解明は植物形態形成を理解する上で重要である。キシログルカンエンド糖転移酵素(XETs)はシロイヌナズナにおいて大きな遺伝子ファミリーを形成している。XETsは双子葉植物の細胞壁主成分であるキシログルカンポリマーを切断する。そして、切断された端を他のキシログルカンと結合させる。この働きをするXETsは細胞壁合成と再編に大きく関わっていると考えられる。シロイヌナズナXETsはアミノ酸配列が大変似ている。このことから、生化学的特性も似ていると思われる。しかしながら、XETsは大変大きなファミリーに発展した酵素なので、各メンバーによって効率よく働く生理学的条件に違いがある可能性がある。

 そこで、著者らはXTHファミリーのうち、TCH4,Meri-5,EXGT,XTR9の4つの酵素を昆虫バキュロウィルス系で合成した。そして生理学的働きをin vitroで比較した。比較したのはKm、最適pH、最適温度、基質の選択性である。また、酵素蛋白の糖付加の必要性、キシログルカン加水分解能力があるかも確かめられた。

 Km、最適pH最適温度の測定には、ドナー基質としてtamarindキシログルカン、アセプター基質としてXLLGolを用いた。XTR9を除く全ての酵素のKmは20〜40μMの範囲内だった。一方XRT9のKm5μMで、高濃度のXLLGolで反応が抑制された。最適pHは全て酵素でpH6.0〜6.5であった。最適温度はTCH4とXTR9は18℃、Meri-5は28℃、EXGTは37℃であった。

 ドナー基質の選択性はキシログルカンポリマーがフコースを持つか否かで調べられた。XTR9はフコース化されていないキシログルカンポリマーを好んだ。他の酵素はフコースの有無に影響を受けなかった。アセプター基質の選択性を見ると、4つの酵素はXXFGolとXXXGol以上にXLLGolを好む選択性を持つことが分かった。

 次に糖付加の影響を調べた。4つの酵素は糖付加されている。これらの酵素をPNGaseで処理して、N-結合型糖鎖を切断した。そして糖付加の有無で活性に変化があるか確かめた。その結果、糖鎖の切断でTCH4とMeri-5の活性だけが著しく減少した。また最後に、4つの酵素が加水分解能力を持たないことが分かった。

 これら各酵素の生化学的働きの微妙な違いはin vivoでのXETsの生理学的働きに影響する可能性があることが示唆された。

 

興味のある方はぜひご参加下さい 善光 千晶