2003年度 後期20回 細胞生物学セミナー
日時:10月07日(火)16:30~
場所:総合棟6階 クリエーションルーム
Asymmetric protoplast fusion between sweet potato
and its relatives, and plant regeneration
Marilyn M. Belarmino, Toshinori Abe & Takeo
Sasahara
Plant Cell, tissue and organ culture Col. 46, No. 3,
pp. 197-202, August 1996
植物細胞には、「分化全能性」と言う動物細胞に無い特有の性質であった。この性質を利用して各種の植物からプロトプラストを単離し培養して新品種作出の系が開発されてきた。プロトプラスト化した細胞が互いに融合しやすくなること、DNAなどの高分子の物質を取り込みやすくなることなどを利用した細胞レベルの遺伝子操作を培養と組み合わせることにより新しい変異体の作出が可能となった。この技術の1つが細胞融合である。細胞融合は、さまざまに利用されるようになったが、限界も見え始めた。例えば、細胞膜が融合して1つの細胞に合体しても核が融合しなかったり、減数分裂の際に染色体の対合が正常に行われず不稔になったりする場合が多いことがわかってきた。また、細胞融合では、目的としない遺伝子もそのまま導入されるため、運良く稔性のある体細胞雑種が得られても、そのまま実用品種にできないことも明らかになってきた。これらの問題点を克服するために、一方の核や細胞質を放射線やヨウドアセアミド(IOA)処理により破損させ、1部の形質のみを導入する非対称細胞融合が試みられるようになった。
今回の実験では、サツマイモ(Ipomoae batatas L. Lam)と野生の近縁種I. Trifida Don. とアメアサガオI. Lacunose L.また栽培品種を利用し、非対称のプロトプラスト融合を行うこと、また、植物体の再生能力について調査することを目的として行った。
X腺処理やIOA処理をすることで、一方の形質のみを表現することができるが、それにより、細胞分裂やコロニー形成など植物再生能力に影響が出るのか、また、かけあわせによって差が出るのかどうかについて調査した。
栽培品種のプロトプラストには、IOA処理を行ったのに対し、近縁種のI. Trifida Don.とI. lacunose L.には、X腺の照射を行った。非対称プロトプラスト融合は、電気的融合法とPEG(ポリエチレングリコール)法で行った。
それぞれの交雑は、shirosatsuma×I. Trifida、shirosatsuma×I. Lacunosa、kanto101×I. Trifida、kanto101×I.
Lacunosaの4つの組み合わせで行い、結果、電気的融合のプロトプラストは、細胞分裂を開始し、PEGで融合させたプロトプラストより早くカルスを形成した。しかし、カルスの形成数については、PEG法の方が多くできた。植物体の再生は、電気的融合のカルスのみ見られた。これにより、PEGは、様々な毒素の効果で植物の再生能力が抑制させるのではないかと、考えられる。
また、電気的融合によるshirosatsuma×I. Trifidaのかけあわせからだけ、植物体が3つ再生した。しかし、どれも花芽が形成しなかったため、種子が生産できなかった。
パーオキシダーゼによるアイソザイムを分析した結果、再生した植物体と融合で得たカルスの両方に種間雑種特有のバンドがあることを確認した。
興味のある方は是非ご参加ください 宮崎 真奈美