2003年度 後期第5・6回 細胞生物学セミナー
日時:10月21日(火)16:30~
場所:総合棟6階 クリエーションルーム
Takumi Takeda, Yuzo Furuta, Tatsuya Awano, Kouichi
Mizuno, Yasushi, and Takahisa Hayashi (2002)
Proceedings of the National Academy of Sciences : 99,
9055-9060
キシログルカンは細胞壁に存在する高分子多糖である。細胞壁内でキシログルカンはセルロースミクロフィブリルに特異的に水素結合している。そして、隣接するセルロースミクロフィブリル間を架橋している。キシログルカンは細胞壁の力学的強度に影響を与えると考えられており、植物細胞の成長に大きく関わっていると考えられている。
著者らは、キシログルカンとキシログルカンオリゴ糖の細胞壁内への組み込みが細胞伸長に与える影響を調べた。実験にはスプリットを入れたエンドウ茎断片と表皮をはいだエンドウ断片を用いた。断片は2,4-Dとキシログルカンまたはキシログルカンオリゴ糖を加えた溶液で培養して、伸長速度、力学的性質などを計測した。その結果、キシログルカンは細胞伸長を抑制し、逆にキシログルカンオリゴ糖は細胞壁内に存在するキシログルカンを可溶化させて、細胞伸長を促進することが分かった。
セルロースミクロフィブリルは、原形質膜のすぐ内側に張り付いている微小管の向きと平行に配列することが知られている。つまり、微小管はセルロースミクロフィブリルの合成方向を制御している。微小管は植物ホルモン、光、機械的刺激に応答して再配列することが知られている。しかし、そのメカニズムは明らかになっていない。そこで、微小管の再配向にキシログルカンの細胞壁内への組み込みが関わっているかどうか調べた。キシログルカンは細胞壁に取り込まれると、伸長方向に対して横向きの皮質微小管を縦、斜め方向に再配列し、伸長を抑制させることが分かった。しかし、タキソール、6-ジメチルアミノプリンで微小管の向きを固定した断片にキシログルカン、キシログルカンオリゴ糖を加えてもそれぞれ伸長の抑制、促進が起こった。このことから、キシログルカンの組み込みは直接的に細胞壁伸長を抑制して、間接的に微小管の配向を変化させるという可能性が示唆された。
興味のある方はご参加下さい 善光 千晶