2003年度 後期第7回 細胞生物学セミナー

 

日時    2003年10月28日(火) 16:30~

場所    総合研究棟6F クリエイションルーム

Genetic evidence that the endodermis is essential for

Shoot gravitropism in Arabidopsis thaliana.

Hidehiro Fukaki, Joannna Wysocka-Diller, Takehide Kato, 

Hisao Fujisawa, Philip N. Benfey, and Masao Tasaka

The Plant Journal 14:425-430(1998)

 

植物はたくさんの環境刺激に高度に適応している。これらの応答のなかでも重力応答(重力ベクトルによって植物の方向を決める成長応答)は、植物の生長と発達において特に重要な現象のうちのひとつである。高等植物では、シュートは負の重力屈性(上方屈曲)を示し、一方根では正の重力屈性(下方屈曲)を示す。根では、沈殿したアミロプラストが、根冠の中心にあるコルメラ細胞で見つかっている。根における重力認知は、これらのアミロプラストの沈降によるものだと信じられている。一方シュートでは、沈殿したアミロプラストは皮層の最内側の層で見つかっている。これは内皮細胞層のデンプン鞘と呼ばれている。Nicotiana SylvestrisArabidopsis thaliana では、デンプンの合成障害によって根冠、胚軸の内皮でアミロプラストの欠乏した突然変異体で、重力屈性の減少が確認される。これらの事実を元にし、内皮細胞はシュートで重力認知をする部位であると仮定した。この仮説を遺伝的に調べるため、我々は胚軸の重力屈性が変化したシロイヌナズナ植物体の変異体(SGR1/SCR、SGR7/SHR)をスクリーニングした。sgr1scrと、sgr7shrとそれぞれ同一の遺伝子座のアリル変異体であることが明らかとなった。SGR1/SCR遺伝子またはSGR7/SHR遺伝子どちらか一方に変異が起きると、通常の内皮細胞が上胚軸と花茎に存在しないという欠損が生じた。これは、内皮細胞はシュートの重力屈性に重要であることと、この細胞層は双子葉植物のシュートにおいて、重力感知の機能をもつということを示唆する。これらの結果はまた、根の放射パターン形成において以前に示されていた役割に加えて、SCR 及びSHRArabidopsis のシュート軸器官の放射パターン形成を制御することを示した。

 

興味のある方は是非ご来聴ください。            三森 裕吉