2003年度第16、17回細胞生物学セミナー
日時:12月2日(火)16:30〜
場所:総合研究棟6階クリエーションスペース
Involvement
of protein kinase and extraplastidic serine/threonine protein phosphatases in
signaling pathways regulating plastid transcription and psbD blue light responsive promoter in Barley
David
A. Christpher, Li Xinli, Minkyun Kim, and John E. Mullet (1997)
Plant
physiol:113 1237-1282
葉緑体の形成、発達はホルモン、光、発達のシグナル伝達などで調節されている。発達のシグナル伝達は色素体遺伝子の転写、RNAの安定性の変化、スプライシングなどを引き起こしている。また、光は葉緑体遺伝子の発現に転写、翻訳のレベルで影響を与え、色素体タンパクをコードする核遺伝子を活性化し、チラコイドの形成に関わり、photosynthetic reaction
center の構成の変化を起こし、酵素活性を調節する。光の量、質の変化はフィトクロム、blue light receptor UV
receptorなどの光受容体が感受し、光合成の酸化還元のポテンシャル、GタンパクcGMP、Ca2+/calmodulinなどのシグナル分子によって伝達される。しかしながら、細胞内部の分子的なシグナル伝達についてはよく分かっていない。
動物、植物の両方において、protein kinase (PK)とprotein phosphatases (PPs) は生理学的な過程においてリン酸化、脱リン酸化に関わる酵素として知られている。PP1、PP2A、PP2B、PP2Cはいくつかの植物において同定されてきた。植物においてはこれらの酵素のリン酸化、脱リン酸化の過程が色素体の生合成に関わることが示唆されている。著者らは発達の過程や、光を受けておこる色素体遺伝子の転写量の変化のシグナル伝達経路を明らかにするために、赤、青白色光下で育てたオオムギ (Hordeum vulgare L.) にPP1、PP2Aの阻害剤であるOkadaic acid (OA) とPKの阻害剤であるK252aを与えて各種の遺伝子発現を測定した。
OAを与えたとき、通常青色光発現が活性化されるpsbD遺伝子のプロモーターのひとつであるBLRP、色素体にコードされているrbcL、psbA、また、核にコードされているRbcS、LhcBの発現が妨げられていた。また、明条件、暗条件の両方において、OAによって色素体遺伝子全体の遺伝子の転写量は70から80%まで減少していた。青色光を照射し、K252aを与えたとき、BLRPによる転写産物の蓄積が見られた。また、psbDのmRNAのの蓄積が見られた。これらのことから、色素体のOAによる光応答遺伝子の発現の減少は、色素体遺伝全体の発現変化によって起こること、protein phosphatase1と2はオルガネラの外に存在し、色素体遺伝子の転写と葉緑体の発達を行っていること、protein kinaseはBLRPによる転写を抑制していることが示唆された。
興味のある方は是非参加してください。 藤林 茂隆