2003年度 前期18,19回 細胞生物学セミナー

日時:12月2日(火)16:30~

場所:総合棟6階 クリエーションルーム

Genetic and chemical reductations in protein phosphatase activity alter auxin transport, gravity response, and lateral root growth

Aaron M. Rashotte, Alison Delong, and Gloria K. Muday (2001)

Plant cell 13:1683-1697

 

 高等植物におけるオーミシンの極性輸送は方向性を持ち、かつ制御された機構である。オーキシンの輸送は、植物の発達、生長のプロセスの重要な段階に関わる。これらのプロセスの中には、重力応答と側根の発達がある。高等植物の胚軸においては、頂部から基部への極性をもった輸送が行われるが、根においては頂部から基部、基部から頂部と双方向の輸送経路がある。根における頂部に向かうオーキシンの輸送は側根の発達を基部に向かう輸送は重力応答に関わることが示唆されている。シロイヌナズナのrcn1突然変異体はprotein phosphatase 2Aの活性が低下し、幾つかの種類の細胞で細胞伸長が見られる。本研究では、蛋白質リン酸化の突然変異体、リン酸化阻害剤、オーキシン輸送の阻害剤を用いて、根における蛋白質リン酸化とオーキシン輸送の関係の解明を試みた。根において、基部側に向かって行われるオーキシンの輸送は、rcn1またはphosphatase阻害剤を与えた時の増加した。しかしながら、オーキシン輸送の阻害剤であるnaphthylphthalamic acid (NPA)を与えた時は正常だった。Phosphataseの阻害は根の重力応答を減少させ、根端におけるオーキシンで誘導される幾つかの重力刺激応答性のの遺伝子の発現を遅らせた。基部側に向かってのオーキシンの輸送の現象が起こるrcn1およびリン酸化阻害剤のカンタリジン処理をした野生種では、通常の重力応答と非対称のオーキシンによって輸送される遺伝子発現が見られた。このことから、基部側に向かって行われるオーキシンの輸送の増加が重力屈性を妨げていることが示唆された。オーキシン輸送の増加しているrcn1またはphosphatase阻害剤を与えた芽生えは、オーキシン輸送に関わる遺伝子であるAGR1/EIR1/PIN2/WAV6やAUX1の発現は見られなかった。一方、NPAを与えずにphospataseの阻害剤を与えた芽生えは、基部方向、先端方向に向かう輸送は正常だった。NPA感受性が減少しているrcn1において、側根の発達は減少している。この結果から、末端部に向かうオーキシンの輸送が側根の発達を調節していることが示唆された。蛋白のリン酸化はオーキシンの輸送に関わっていて、基部側と先端部側に向かうオーキシン輸送が違った調節経路をもっていることが明らかになった。

 

興味のある方は是非参加してください。 藤林 茂隆