2003年度 後期16・17回 細胞生物学セミナー
日時:12月2日(火)16:30~
場所:総合棟6階 クリエーションルーム
Subcellular localization of expansin mRNA in xylem
cells
Kyung-Hoan Im, Daniel J. Cosgrove, and Alen M. Jones
(2000)
Plant Physiol : 123, 463-470
植物細胞は、ミクロフィブリルや付着しているマトリックス多糖、蛋白質で形成される壁ネットワークを調節することによって拡張している。α−エクスパンシンと呼ばれる細胞壁蛋白ファミリーは壁を緩める要因であり、単離した細胞壁のセルロースミクロフィブリルとマトリックス多糖の間の非共有結合を分離させることによって、壁の伸長を促進していると考えられている。考えられている。また、高等植物の導管は、水輸送と植物体の機械的支持を主な機能とする木部組織の重要な構成要素で、それらを構成する個々の細胞である管状要素は、高等植物において最も特殊化の進んだ細胞群の一つである。現在、維管束誘導系を用いてヒャクニチソウの単離葉肉細胞からの、管状要素への細胞分化転換系の研究が進んでいる。今回著者らは、ヒャクニチソウの単離葉肉細胞から分化した管状要素から、新しい3つのエクスパンシンを明らかにし、それらの発現と壁の変化のタイミングを比較した。
著者らは、シロイヌナズナのエクスパンシン遺伝子EXP1,EXP9のミックスプローブを用いて、管状要素に誘導されたヒャクニチソウの培養細胞から作り出したcDNAライブラリーから、3つのα−エクスパンシンクローン(ZeExp1,
ZeExp2, ZeExp3)を単離し、その3つのcDNAの配列とシロイヌナズナのExp1を比較した。また、ノーザン解析によって、それらの発現と壁の変化のタイミングを比較した。二次壁の形成が始まる72時間後からZeExp1,
ZeExp2の発現量が減少したが、ZeExp3は発現に変化が見られなかった。
植物体の各部位におけるZeExp1, ZeExp2, ZeExp3エクスパンシン遺伝子は、茎組織発現し、子葉や葉の組織においても僅かに見られた。しかし根においてはZeExp2,
ZeExp3は発現しなかったのに対し、ZeExp1は発現していた。
In situハイブリダイゼーションを行った結果、シグナルは斑点状に見られ、原生木部や後生木部に隣接した細胞の側面に強く発現していた。管状要素から50〜100mm離れた、隣接していない細胞にも同じように見られた。また、分裂組織の近くの原生木部の分化が行われる場所において、ZeExp1は細胞の先端側において、またZeExp2は基部側において発現していた。
これらのことより、この3つのエクスパンシンは木部細胞特異的であり、分化した木部細胞の一次壁の侵入成長に影響を与えているかもしれないということを示唆している。
興味のある方は是非ご参加下さい 中林 いづみ