2004年度 前期 第1回 細胞生物学セミナー
日時:4月20日(火) 16:30〜
in the Arabidopsis
thaliana
hypocotyl
Gendreau,
E., Hfte, H., Grandjean, O., Brown, S., and Traas, J. (1998)
Plant
J. 13 : 221-230
植物は環境からのストレスに応答し て、植物自体の形態を変化させることにより環境に適応することができる。このような形態の変化に関与する遺伝子発現は、植物が受け取る外的環境により緻密に制御されていると考えられる。多くの環境要因が存在するが、そのなかでも光は形態形成において重要な役割を担っている。
シロイヌナズナ芽生えの形態形成において、環境からの光情報により以下のような形態変化がもたらされる。明所で発芽した場合、子葉が展開し、葉緑体の分化が見られ、同時に胚軸の伸長抑制が起こる。一方、暗所で発芽した場合は、子葉が未発達のままで葉緑体の分化も見られない。さらに胚軸が伸長するため、いわゆる”もやし”の形態を示す。このように植物は明所や暗所に応じて異なった形態形成を行う。これらをそれぞれ光形態形成、暗形態形成と呼ぶ。また、暗所で伸長した胚軸の細胞では、エンドリデュプリケーション(endoreduplication)とよばれる細胞分裂の伴わないDNA複製が明所の胚軸細胞より多く観察される(明所ではDNA量が2Cから、4C、8Cへと2サイクル、暗所では2Cから、4C、8C、16Cへと3サイクルの複製が起こる細胞が観察される)。シロイヌナズナの胚軸においてはエンドリデュプリケーション、胚軸伸長ともに光による抑制を受けると考えられることから、エンドリデュプリケーションと細胞の伸長・拡大は相互関係を持っている可能性が考えられる。
そこで、本研究ではシロイヌナズナを用いて、エンドリデュプリケーションと細胞の伸長・拡大との相互関係、エンドリデュプリケーションにおけるフィトクロムの役割を明らかにすることを目的とした。実験方法としては、胚軸細胞集団中の個々の細胞の核をDAPI染色で蛍光標識し、フローサイトメトリーにより様々な突然変異体の相対的な核DNA含量を測定することで検討した。
その結果、青色光下において、クリプトクロームの突然変異体(hy4)は野生型の三倍の胚軸長を示したにもかかわらず、核DNA含量は野生型と同等であった。加えて、ブラシノステロイド前駆物質生合成突然変異体(cpm17)を暗所で生育したところ、明所で生育した野生型とほぼ同等の表現型を示したにもかかわらず、暗所で生育した野生型と同等の核DNA含量を示した。このことは、エンドリデュプリケーションと細胞の伸長・拡大が独立した調節を受けていることを示している。
一方、暗所、近赤外光下の両条件において、phy Aが同様の核DNA含量を示したこと、その割合が暗所で生育した野生型の核DNA含量とほぼ同等であったことによって、エンドリデュプリケーションの抑制にPHY
Aが必要であることが示唆された。また、白色光、赤色光下では、phy Bが16Cへの移行を近赤外光下のphy
A同様に抑制したが、野生型よりも16Cの割合は減少していた。このことは、PHYBはエンドリデュプリケーションには必要であるが、付加的なフォトレセプターとして機能していることが考えられる。
興味のある方は是非ご参加ください 本間 善弘