2004年度 前期6回 細胞生物学セミナー
日時:5月11日(火) 16:30~
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
A new structural element contaiing glycine-rich
proteins and rhamnogalacturonan 1 in the protoxylem of seed plants
Ryser, U., Schordert, M., Guyot, R., Keller, B. (2004)
J. Cell Sci. 117: 1179-1190
種子植物の細胞壁は、主にセルロース、ヘミセルロースおよびペクチンのような多糖から構成され、更に、それらは構造タンパク質を含んでいます。このタンパク質はglycine-rich protein
(GRP), plorine-rich protein (PRP) ,hydoroxyproline-rich glycoprotein (HRGP)のように分類されています。そしてこれらは、細胞壁の力学的強度や防御応答に強く関わっているのではないかと考えられています。また、GRPに関しては、細胞壁のリグニン化に関与しているのではないかとも考えられています。しかし現在これらのタンパク質の役割についてはほとんどわかっていません。
また、木部は維管束植物の水を通す主な器官です。それは死んだ細胞壁から構成され、原生木部は若く伸長する植物器官の水を運ぶ組織であるが、後生木部は伸長成長の終わりごろのみ分化し始めます。生長している植物にとって必要なことは、急速に木部柔組織細胞を伸長することと、死んでいる原生木部要素(PX)の細胞壁から構成される送水システムを維持することです。この課題に応じるために種子植物が発達してきた調節は、まだ完全に理解されていません。しかし、木部特有のリグニンを含む、管状とらせん状の形をした二次壁の肥厚(SW)は、死細胞であるPXの受動的な伸長を可能にしていると考えられます。
今回、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、GRPを含んでいる新しい構造要素(GRP conteining Cell wall material [GRPCWM])が、種子植物の伸長している器官の成熟した原生木部で可視化されました。GRPCWMはPXの間の壁を形成し、管状や螺旋状のSWを相互に連結させていることがわかりました。またこの解析からGRPCWMは正確な位置に管状かつ螺旋状のSWを固定することによって、SWが圧縮したり傾いたりするのを抑制して、原生木部の早期の崩壊を防いでいるのではないかと考えられます。
GRPCWMの構造の機能は、酵素の加水分解および抽出、PXの分離によって調べられ、この構成要素は密接にペクチン多糖のラムノガラクツロナン氓ノ関係しているということが示唆されました。そして最後に、ゲノム情報の解析によって、これらのグリシンに富んだ細胞壁は種子植物の進化の初期から始まっているということがわかりました。
興味のある方は是非ご参加下さい。 中林いづみ
つまりGRPCWMは原生木部を安定させて、3次元的ネットワークを形成すると示唆されます。