2004年度 前期第8回 細胞生物学セミナー
日時 5月18日(火)16:30〜
場所 総合研究棟6階 クリエーションルーム
Chemical
composition and ultrasutructure of broad bean (Vicia faba L.)
nodule
endodermis in comparison to the root endodermis
Hartmann, K., Peiter, E., Koch, K., Schubert, S., Schreiber, L.(2002)
Planta 215: 14-25
根粒は、宿主植物であるマメ科植物の根毛が根粒細菌から出されるnodシグナルに応じて、形態形成が誘導される。根粒細菌はその後、自身はバクテロイドに分化し、細胞質にコロニーを形成する。この研究では、Rhizobium属バクテリアによって、マメ科植物であるVicia faba L.(ソラマメ)に形成された根粒の内部構造について調べた。
根粒の中心にバクテロイドのコロニーが存在し、皮層が“根粒内皮”と呼ばれる細胞層によって内皮層と外皮層に仕切られている。根粒内皮は、水、ガス、病原体、溶質の漏出、侵入を防ぐアポプラスティックバリアーとして働いていると考えられている。また、根粒内の維管束には、カスパリー線を持つ“維管束内皮”と呼ばれる構造に囲まれており、維管束内皮は、根の内皮と同じような働きをする。
酸素存在下でニトロゲナーゼが不活性化するため、根粒は、酸素が中心柱へ達するのを防がなければならない。さらに微生物の侵入、水の流出を阻止し、N2固定を行う最適環境を作り出すために根粒は、アポプラスティックバリアーを発達させてきたと考えられる。
今回筆者らは、根粒内において異なる機能を示す根粒内皮と維管束内皮の発達を組織染色したのち、光学および蛍光顕微鏡で観察した。また、根粒内皮と根の内皮の微細構造と化学組成を比較するために根の内皮、根の表皮、根粒の内皮、および根粒の外皮層などの細胞壁から単離したスベリン・リグニンの組成分析・定量を行った。その結果、根粒内の根粒内皮と維管束内皮の起源、発達、機能が著しく異なることを示す顕微鏡像が得られた。また、4つの組織中で根粒内皮のスベリン・リグニン含有量が最も多く、それぞれの組織において、スベリン・リグニン組成も異なっていた。根粒内皮と根の内皮のスベリン成分の物質的違いが2つの組織の生理学的機能の違いを反映しているといえる。根粒の外皮層細胞壁は、約90%がトリペノイドであり、疎水性に富んでいた。いずれの組織においても化学組成は、バリアーとしての働きを反映しているといえる。
興味のある方は、ぜひご参加ください。 山影 茜