2004年度 前期 第9回 細胞生物学セミナー

 

日時 2004年5月25日() 17:00~

     場所 総合研究棟6階 クリエーションルーム

  Arabidopsis RGL1 Encodes a Negative Regulator of  Gibberellin Responses

Chi-Kuang Wen and Caren Chang

The Plant Cell, Vol. 14, 87-100, January 2002

 

シロイヌナズナの、GRAS調節遺伝子のDELLAサブファミリーはGAIRGARGA-LIKE1(RGL1)RGL2RGL3から成り立っている。そして、GAIRGAはジベレリン(GA)応答の負の調節を行っていることが知られている。

著者らは、RGL1を過剰発現させた表現型と、欠損させた表現型を使って、RGL1にはGA反応の抑制因子と似た働きがあることを発見した。シロイヌナズナでのGA反応は、GAに反応しないgai-1変異体に似たDELLA領域の欠失がある優性35S-rgl1導入遺伝子(RGL1を過剰発現させるため)によって抑制された。GAの不足したシロイヌナズナで、遺伝子を導入すると、未発達なトリコームや花が形成され暗緑色の矮小型になった。それとともにGA4(フィードバックで調節されたジベレリン合成遺伝子)の発現レベルは増加した。逆に、rgl1系統(RGL1を欠損させた変異体)ではGA合成阻害剤であるパクロブトラゾールを加えるとGA4の発現は下がった。しかし、このパクロブトラゾール下で種子の発芽、葉の開閉、開花、茎の伸長、そして、花の発達といった一般的にGAを必要とする反応が見られた。

 一方、RGL1は、種子の発芽においてGAIRGAよりも大きな役割を担っていることがわかっている。RGL1の発現の特性は、ほかの4つのDELLAサブファミリーの遺伝子とは違い、RGL1のメッセージレベルが花の発達過程、特に胚珠と葯の形成時に増加した。RGAのように、緑色蛍光タンパク質であるGFPRGL1につけて観察すると、RGL1は核に局在していることがわかった。しかし、GFP-RGAとは違いGA処理をした後でも、GFP-RGL1は分解されなかった。

 これらの研究からRGL1の作用は部分的に重複してはいるが、GA反応の負の調節を行っていることが示された。さらに、すべてのDELLAサブファミリー遺伝子は、GAシグナル伝達においてそれぞれの独立した役割だけでなく重複している役割を持つことが示唆された。

 

 興味のある方は学年、研究室にこだわらず、ぜひご参加ください。   松本 翔平