2004年度 前期第13回 細胞生物学セミナー

日時:6月22日(火)17:00~

場所:総合棟6階 クリエーションルーム

Highly-effect somatic embryogenesis from cell suspension cultures of Phalaenopsis Orchids by adjusting carbohydrate sources

Tokuhara K, Mii M

In Vitro Cell. Dev. Biol. Plant 635-639, 2003

 

 ランは植物の中では最も進化した種の一つで、その美しい花で知られています。Morel(1960)がウィルスフリー植物体の発芽片の培養によりCymbidiumでのPLB(プロトコーム体)を経る増殖方法の確立から、多くの商業上のラン増殖の方法を方向付けた。ランでは若い花茎での発芽片培養、その他多くの部分を使ってのPLB形成を経る大量増殖が報告されている。それらはランの商業上の生産を容易にした。筆者らは過去に高胚発生率のカルスは若い花茎から得られると報告し、そこからの懸濁液培養を経る再生のシステムも確立している。また最近では大量増殖の効率的方法も確立された。

 ランの懸濁細胞由来のPLBの発達と成長については様々な炭水化物源、またドライイースト(DY)、6ベンジルアミノプリン(BA)などの効果が推測されていた。そこで筆者らは適した炭水化物源(グルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、ソルビトース、フルクトース)とその濃度の選別、およびDY、BAについて細胞懸濁培養での効果的なPLB形成を試みた。

 今回試されたDoriataenopsisでは、58.4mMのグルコースが最も高い効率でPLBを形成した。マルトースとソルビトースはカルスの増殖をせず、PLB形成を誘導した。スクロースはグルコースと類似のカルス増殖を誘導したが、PLB形成は起こさない。一方、フルクトースのカルス増殖率は、グルコースでの半分の量であった。さらにラクトースはPLB形成とカルス増殖には不適切であった。

 DYは0.1〜1.0gl-1で細胞増殖と促進させる。しかし10gl-1ではPLB形成と細胞増殖と阻害する。少量のBA(0.4μM)は僅かにカルス増殖を促進させるがPLB形成は阻害する。1.0gl-1のDYでのみ少数の植物を成長させた。P.Snow ParadeとP.Wedding Promenadeにおいて、P.Snow Paradeでは、29.2mMのスクロースで最も効果的にPLB形成が誘導され、P.Wedding Promenadedeでは、14.6mMのグルコースが最も効果的であった。

 筆者らの研究では、ランのカルス懸濁培養からのPLB発達は単にグルコースとスクロースの濃度を変えることにより調節でき、難なく小植物へと導ける。この単純な方法は、大量増殖やAgrobacterium培地での形質転換に効果的に利用され、細胞から大量に植物を作り出すことを可能にした。

 

興味のある方は是非ご参加下さい。 早川 眞人