2004年度 前期第15回 細胞生物学セミナー
日時:7月6日(火)16:00~
場所:総合棟6階 クリエーションルーム
In vitro somatic embryogenesis and plant
regeneration in Acacia arabica
Rashimi M. Nanda & G.R. Rout
Plant Cell, Tissue and Organ Culture 73 : 131-135,
2003
Acasia arabicaは熱帯地方、亜熱帯地方全体に広く分布しているマメ科の木である。元々は、インドのデカン地方と熱帯アフリカで繁殖していた。農業用の道具や燃料の薪として使用され、さらには、土壌浸食を防ぎ、土壌を肥沃にするなど生態的にも大変価値のある種である。しかし、この種は自然状態では、発芽率が非常に低く、若木の内に枯死しやすく、したがって種まきによる繁殖も当てにならない。そのため、成体に成りやすく、病気に対する抵抗力をもった優良な個体をクローンによって増殖させることが重要である。
Acacia catechu, Acacia farnesianaなどの種では大量繁殖は成功しているが、Acacia qrabicaはまだ報告されていない。
今回の実験は、Acacia arabicaの種子から未熟受精配を取り出し、BA、カイネチン、2,4-D、NAAなどを添加したMS培地で不定胚発生の誘導を試みた。
その結果、8.88μM BA、6.78μM 2,4-D、30gl-1(w/v)シュークロース、ビタミン類を添加した時、胚発生能のあるカルス形成率は最高値を示し、このカルスを6.66μM
BA、6.78μM 2,4-Dを付加した培地に移すと体細胞胚の発生が起こり、さらに二次不定胚発生が生じた。
分離した胚は、0.04μM BA、0.94μM ABA、2%シュークロースを添加した半分の濃度のMS培地に移すと発芽した。BAのみを添加した培地では発芽は見られず、ABAを加えることにより二次カルスを増殖することなく、子葉や幼芽、また幼根が形成した。つまり、今回の実験で用いた濃度のABAはAcacia
arabicaの生長と発芽を促進する作用を持つことが分かった。
胚から誘導した324の植物苗は温室により順応させたが、そのうち約40%しか正常な成長をしなかった。温室内での成長においてさらなる研究が必要である。
今回得られた結果は、Acacia spp.また多の木本性マメ科植物の増殖に役立つだろう。
興味をもたれた方は、是非ご参加下さい。 熊切 理恵