2004年度 前期15・16・17回 細胞生物学セミナー
日時:7月6日(火) 16:00~
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
Zinnia elegans uses the same peroxidase isoenzyme complement
for cell wall lignfication in both single-cell tracheary elements and xylem
vessels
López-Serrano, M., Fernández,
M.D., Pomar, F., Pedreňo, M.A., Ros Barceló, A.(2004)
J.Exp.Bot. 55:423-431
道管や仮道管あるいは篩管の二次細胞壁には、芳香族アルコールの複雑な重合体であるリグニンが特異的に沈着します。リグニンを沈着させ植物細胞壁を閉鎖するプロセスはリグニン化(木化)として知られていて、セルロース繊維を化学的・生物学的崩壊から守って、茎に機械的な強度を与えています。ペルオキシダーゼは、リグニン合成経路でできたシナミルアルコール類を細胞壁上で重合しリグニンを合成する酵素の一つであることがわかっています。またこれまでの研究から、ヒャクニチソウの培養系を用いて、リグニン合成特異的と考えられるペルオキシダーゼのイソ酵素(化学的には異なるが同一の触媒反応を示す)が発見されています。
今回著者らは、ヒャクニチソウ培養細胞系の木部要素と、芽生えの木部の間で、ペルオキシダーゼイソ酵素の相同性と、相違を調べることを目的としました。まず、SDS-PAGE、非勾配条件での等電点電気泳動法(NEIEF)や陽イオンPAGEを用いて解析すると、木化したヒャクニチソウの芽生えの胚軸と茎の両方から、pI約12のペルオキシダーゼをもつことがわかりました。そしてその分子量は約43000と他の植物のペルオキシダーゼと似た分子量を示しました。
また、ヒャクニチソウの基本的なペルオキシダーゼのN末端のアミノ酸はKVAVSPLSとなっており、その他の植物のペルオキシダーゼのN末端と強い相同性を示しました。
そして、イソ酵素とウエスタンブロット解析より、分化転換したヒャクニチソウの道管培養細胞でもこのペルオキシダーゼイソ酵素が同じく発現することを示しました。そして、ヒャクニチソウ培養細胞が単にヒャクニチソウ芽生えの木部と同じペルオキシダーゼイソ酵素を発現するだけでなく、このペルオキシダーゼが葉肉培養細胞で木部要素分化のマーカーの役割を務めるということを示しました。
これらの結果は、ヒャクニチソウが葉肉細胞(道管要素)あるいは形成層由来の木部で、異なる個体発生経路から成るにもかかわらず、木部を木化する際に同一のペルオキシダーゼイソ酵素補完物を使っているということを示唆しています。
興味のある方は是非ご参加ください 中林 いづみ