2004年度前期 第18・19回 細胞生物学セミナー

日時:7月13日(火) 16:30~

場所:総合研究棟6階クリエーションスペース

Molecular Dissection of the Hydrophobic Segments H3 and H4 of

the Yeast Ca2+ Channel Component Mid1

Tomoko Tada, Masayuki Ohmori, and Hidetoshi Iida

THE JOUTNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol. 278, No. 11, pp. 9647–9654, 2003

 

出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae) は性フェロモンであるα-factorの作用によって性接合が可能な細胞に分化する。その過程にはCa2+の流入が必要であり、もしそれが制限されると細胞は死に至る。mid1 変異体はα-factor作用後のCa2+の流入に欠損を持つために致死性を示す株として単離された。そして、mid1変異株の致死性を相補できる遺伝子としてMID1が単離され、その推定アミノ酸配列が決定された。MID1は548アミノ酸残基で構成されており、4つの疎水性領域H1、2、3、4を持っていることがわかった。この4つの疎水性領域はMID1機能に必要不可欠な領域と予想された。さらに、哺乳類の細胞でMID1を発現させると、Ca2+透過性伸展活性チャネルとして機能することが確認された。伸展活性化イオンチャネルとは機械刺激によって膜が伸展することによって開くイオンチャネルである。伸展活性化イオンチャネルは電位作動型やリガンド作動型のイオンチャネルにくらべて知見が少ない。特に真核生物の伸展活性化イオンチャネルは構造、機能部位、伸展感受機構などほとんど分かっていない。MID1は既知のイオンチャネルと相同性を持たず、新規イオンチャネルである可能性が高い。そこで本実験では、MID1の機能に必要と推定される、H3、H4におけるアミノ酸残基およびアミノ酸残基群の特定を試みた。

著者らは初めに、MID1H3またはH4を欠失させた遺伝子を含むプラスミドを、mid1 変異体に導入した。そして、in vivoでα-factor添加後の生存率およびCa2+の蓄積を測定した。H3またはH4を完全に欠いたMID1タンパク変異体H3DeとH4Deは生存率が低く、カルシウム蓄積量が著しく低下した。これは、H3とH4はそれぞれMID1機能に必要であることを示す。さらに、H3 とH4 のすべてのアミノ酸がそれぞれ置換されるように点変異を導入し、先ほどと同様に、変異させたMID1 mid1 変異体に導入して生存率およびCa2+の蓄積を測定した。著者らは4つの激しい機能欠失変異体をみつけた。(D342E,F356S,C373D,C373R)。

また、高レベルのカルシウム蓄積を引き起こし、生存率が低い2つの興味深い変異体を見つけた(G342A,Y355A)。変異体において、変異MID1タンパクの局在と安定性、発現量はWT-MID1と違いはなかった。したがって、H3、H4のこれらアミノ酸残基はMID1機能にたいへん重要な役割を果たすことが示唆され、このアミノ酸残基を手がかりにMID1の構造と機能の考察を行なった。

 

興味のある方は是非ご参加ください              善光 千晶