2004年度  後期第1,2回   細胞生物学セミナー

日時:9月28日(火) 16:30〜

場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム

 

Preferential and asymmetrical accumulation of a Rac small GTPase mRNA  in differentiating xylem cells of zinnia elegans

I.Nakamoto,B.Kost,N.Chua,H.Fukuda(2002)

Plant Physiol.43:1484-1492

 

  低分子GTPaseはGDPと結合している状態では不活性型であるが、上流からのシグナルのよってGDPと解離、GTPと結合する事によって活性型に転換され、標的タンパク質に作用する。その後、GTPがGDPに加水分解される事によって不活性型に戻る。このように低分子GTPaseは細胞内のプロセスを制御する分子スイッチとしての働きが知られている。

 木部の分化には、アクチンの再構築、リグニンの生合成に伴う二次壁の肥厚、プログラム細胞死などの過程が伴うが、以前の研究で低分子GTPaseの一つであるRac GTPaseはこれらの過程での働きが示唆されていた。そこで、ヒャクニチソウの単離葉肉細胞を、管状要素へ分化させる培養系を用いることにより、特に導管の分化に関わっていると思われる Rac GTPase遺伝子の単離を試み、その発現を詳細に観察した。

 管状要素への分化が見られ始める、培養後48のヒャクニチソウの培養細胞から、Degenerate PCR、5-race、3-raceにより、Rac GTPaseと思われる完全長cDNAを単離し、ZeRAC2と名付けた。また、このZeRAC2から推定されるアミノ酸配列はRac GTPaseに高度に保存されている、GTP/GDP結合領域、GTPase領域、作用領域、C末端のゲラニル化部位のすべてを持っていた。さらに、このZeRAC2 mRNAの発現は、管状要素への分化が始まる培養後48hに一過的に高まっていることが分かり、分化への関わりが示唆された。生体内でのZeRAC2 mRNAの局在を観察するために、ヒャクニチソウの14日芽生えを用いてin situ hybridizationを行なった。そのシグナルは管状要素の前駆体の細胞、木部柔組織細胞の発達中の管状要素に隣接する面で見られた。次に、ZeRAC2の細胞内局在を、GFP- ZeRAC2を培養細胞内で過剰発現させる事によって観察を試みた。結果、GFP- ZeRAC2は細胞膜に接するような形で細胞内に局在する事が分かった。

             興味のある方はぜひご来聴ください。   土屋 紀之