2004年度 後期 第3・4回 細胞生物学セミナー

日時:10月5日(火) 16:30〜

場所:総合棟6階クリエーションルーム

Transient exposure to ethylene stimulates cell division and alters the fate and polarity of hypocotyl epidermal cells

Haruko Kazama, Haruka Dan, Hidemasa Imaseki, and Geoffrey O. Wasteneys (2004)

Plant Physiol 134 : 1614-1623

 

 エチレンは果実の後熟、葉や果実の老化促進、離層形成、細胞の肥大生長促進など、植物のさまざまな生理作用を調節している。なかでも細胞伸長の抑制・肥大生長の促進に対する研究は広く行われており、一般的に若い発達中の双子葉植物にとってエチレンは伸長生長のネガティブレギュレーターとして報告されている。伸長生長を規定するパラメーターには細胞伸長と細胞分裂が大きく関わっていると考えられるが、エチレンによる細胞の肥大などの研究と比較すると、エチレンが細胞分裂に影響を与えるという研究報告は少ない。そこで著者らは細胞分裂調節に対するエチレンの影響について調べた。これまでに行われてきた植物体へのエチレンの影響を調べる研究では、環境要因によってその生成が一時的に誘導されるような自然界で起こりうる状況とは異なり、常にエチレンが多量に存在する環境で生育させた結果を示したものが多くを占める。そこで著者らは、一時的にストレスに曝された植物体の反応を見るために、エチレンによる形態変化を受けやすい気孔やトライコームに着目し、キュウリの黄化芽生えの胚軸においてエチレンの影響を調べた。

 本実験では3日齢の芽生えに2日間エチレンを処理し、その後新鮮な空気と入れ換え、さらに2日間生育した芽生えを用い、気孔とトライコームの形態的な変化とそれらを構成する細胞数を調べた。その結果、一時的なエチレン処理において、暗所で生育したキュウリ胚軸の気孔やトライコームは異常な発達を示し、エチレン除去後、コントロールと比較して孔辺細胞と副細胞が増加した。また孔辺細胞や副細胞の増加は胚軸の中間付近で多く観察された。このことは、エチレンに対する気孔形成への影響は発達のステージに依存することを示唆している。また、エチレンを除去せず処理し続けた場合には変化が観察されなかったことから、エチレンは通常の細胞を気孔の発達過程に移行させることが示唆された。また、トライコームにおいては、分泌トライコームと毛状のトライコームの形態が変化し、トライコームを構成する細胞数がコントロールと比較して濃度依存的に増加した。さらに、エチレンを処理することで孔辺母細胞の分裂面が変化すること、異常に枝分かれしたトライコームが発達することなどから、エチレンは細胞分裂の極性を変化させることが示唆された。これらの研究の結果は、キュウリ胚軸においてエチレンレベルの一時的な上昇が起こると、細胞分化の運命が変化すること、また、エチレンにより細胞分裂する傾向が増大することが示された。

 

                 興味のある方は是非ご参加下さい。 本間 善弘