2004年度 後期第7.8回 細胞生物学セミナー

日時:10月19日(火)16:30~

場所:総合研究棟6F クリエーションルーム

Uncoated endocytoosis vesicles require the unconventional myosin, myo6, for rapid transport through action barriers

Aschenbrenner, L., Naccache, S. N., and Hasson, T.

Mol. Biol. Cell. 15:2253-2263

 

 クラスリンを介したエンドサイトーシスは、リガンドを初期エンドソームへ輸送するのに複数のステップを踏む。まずクラスリン被覆小胞が形成され、その後クラスリンが脱落し非被覆小胞となり、初期エンドソームと結合そして融合する。クラスリン被覆小胞の形成と脱被覆は原形質膜直下で行われる。上皮細胞において、この区画では表層アクチンフィラメントが(+)端を原形質膜側に、(−)端を核側に向け、各F-アクチン間をアクチン結合タンパク質が架橋することでアクチン網が形成されている。そのためアクチン網が小胞輸送に対するバリアであると思われたが、特異的な非被覆小胞のマーカーがないためにこの仮説の検証は不可能であった。

 しかし以前の研究から、アクチンに基づく分子モーターとして、従来にないミオシンであるmyo6が非被覆小胞に結合していることが示され、myo6が他のミオシンと異なりアクチンフィラメント上を(−)端に向かって移動することから、アクチン網が小胞輸送に対するバリアであるとすると、myo6がそれを突破する原動力となることが示唆される。そこで筆者らは、小胞輸送におけるmyo6の役割とF-アクチンの役割を検証するために、ヒト網膜色素上皮細胞を用いて以下の実験を行った。

 GFPで標識したmyo6(GFP-M6)の動きをtime-lapse解析したところ、全ての小胞が細胞内方向に向かう網状のベクトルを示し、さらに小胞の融合や伸展を示した。これがmyo6モーター活性によるものか否かを検証するために、モータードメインを欠くGFP-M6tail過剰発現を用いたところ、この小胞は指向性が欠如することが示された。また小胞の伸展は観察されず、モータードメインが伸展の原動力を生み出すことが確認され、融合現象の定量からモータードメインが融合の割合を調節または促進することが示唆された。以前の研究でtransferrin輸送を追跡するpulse-chase実験によってGFP-M6tail過剰発現が小胞輸送の遅延を引き起こすことが示されmyo6欠如下でも何らかのメカニズムで小胞輸送がおこっていることが示唆された。このメカニズムとして、エンドソームによる捕獲に伴う拡散とベルトコンベアーのようなアクチンの動きが考えられた。そこでモーター活性を欠く変異体GFP-M6(K157R)をつくりだし、小胞の輸送速度、輸送距離、拡散係数を調べたところ、このメカニズムが前者によるものであることが明らかとなった。また同時にこの実験から、アクチンが小胞輸送のバリアであることが示唆され、これを検証するために、F-アクチン脱重合剤latrunculin Aを用いてpulse-chase実験、ELISA解析を行ったところ、latrunculin A処理区で小胞輸送が促進されたことから、アクチンが小胞輸送を妨げていることが示された。

 以上のことからアクチンがエンドサイトーシス小胞の輸送に対するバリアであり、myo6がこのバリアを突破するために小胞の表面に結合すると結論づけられた。

 

                                     皆様お気軽に御参加ください。須田 甚将