2004年度 後期7,8回 細胞生物学セミナー

日時:10月19日(火) 16:30~

場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム

Limited Correlation between Expansin Gene Expression

and Elongation Growth Rate

Doina Caderas, Matthias Muster, Hannes Vogler, Therese Mandel, Jocelyn K. C. Rose, Simon McQueen-Mason, and Cris Kuhlemeier (2000)

Plant Physiology 123, 1399-1413

 

細胞壁タンパクのエクスパンシンはin vitroで細胞壁の伸展性を増加させる(McQueen-Mason et al., 1993; Cosgrove and Durachko, 1994)。エクスパンシンは細胞壁において、セルロースミクロフィブリルとマトリックス多糖間の水素結合を切断すると考えられている(McQueen-Mason and Cosgrove, 1994)。また、多くの植物で、エクスパンシンの遺伝子がクローン化されており、大きな遺伝子ファミリーを形成している。これらの報告から、エクスパンシンは伸長成長に関わる重要なタンパクであると考えられる。そこで著者たちは、伸長成長におけるエクスパンシンの役割の解明を目的とし、急速に伸長する組織における2つのトマトエクスパンシン遺伝子(LeExp2,LeExp18)の発現調節について、研究を行なった。

LeExp2遺伝子は黄化胚軸の伸長領域で強い発現を示した。また、茎断片を横に倒し、重力屈性刺激を与えると、茎の伸長が速い下側の部分で強い発現を示した。一方、LeExp18遺伝子は伸長成長と相関のある発現を示さなかった。

植物ホルモンは胚軸の伸長成長に影響を与えることがわかっている。オーキシンやブラシノライドを植物にあたえると胚軸の伸長は促進される。そこで植物ホルモンとエクスパンシン遺伝子発現の関係を解析した。胚軸にオーキシンまたはブラシノライドを加えると、LeExp2遺伝子の発現が高まった。また、茎においてはLeExp2LeExp18遺伝子の発現が高まった。しかし、ブラシノライドはオーキシンより胚軸の伸長を促進させたにも関わらず、LeExp2遺伝子の発現はオーキシンを加えた胚軸の方が高かった。

環境シグナルの一つである光は、植物の成長を抑制することが知られている。そこで光とエクスパンシン遺伝子発現の関係を解析した。LeExp2遺伝子の発現は、暗条件下においた胚軸より、明条件下においた胚軸のほうが高い発現を示した。しかし、暗条件下、明条件下においた胚軸から抽出したエクスパンシンタンパクの量と細胞壁進展活性は両条件で同程度だった。

これらの結果から、エクスパンシンと伸長の速さは強い相関を示す。しかし、その相関は完全ではないことがわかった。伸長成長はエクスパンシンと伸長を制限する他の因子とが共同して働くことで制御されていると示唆された。

興味をもたれた方はご参加ください。 善光 千晶