2004年度 後期第11,12回細胞生物学セミナー
日時:11月2日(火) 18:30~
場所:総合棟6F クリエーションルーム
Endogenous cytokinin
levels in embryogenic and non-embryogenic calli of Medicago arborea L.
Beatriz Pintos, Juan Pedr Martin, Maria Luz Centeno,
Nieves Villalobos
Plant Science 163(2002), 955-960
<ウマゴヤシにおける胚発生カルスとnon胚発生カルス中での内生サイトカイニン量>
ウマゴヤシは地中海に生育するマメ下の草木で干ばつへの抵抗など極度な環境状況にも対応できる植物で、地中海のような乾燥した土地の牧草地で使用されます。組織培養は新しい形質の生産とクローンの増殖の方法の一つとして育種プログラムの一端を担っています。ウマゴヤシでの不定胚発生は、交雑種と同様に自家生殖の種でも報告されている。ウマゴヤシの不定胚発生で使われる培地は一般には、オーキシンとして2,4-D、サイトカイニンとしてBA、カイネチン、チディアズロン、ゼアチンのいずれかが使われますそのサイトカイニンの種類と濃度は種によって変わってきます。
今回の実験ではM.arborea L.の葉柄片を使い異なったサイトカイニン(BA、カイチネン)を使った培地で誘導した2種類のカルス(Embryogenicカルス(E)、Non-embryogenicカルス(NE))の内省サイトカイニン量を分析したそして培地のサイトカイニンによるカルス中のサイトカイニン量の変化を観察した。初めの2ヶ月間はBA(2mg/l-1)、カイネチン(2,0.25mg/l-1)を含む培地で生育させ、その後にはE、NEを選別してサイトカイニンフリーの培地に植えかえてそれぞれを分析した。その結果初めの1ヶ月での変化はBAの方がカイネチンよりもずっと高い内生サイトカイニン量の値を示した。BAではこの値は葉柄より多く、カイネチンでは葉柄より少ないか、同じような値をとった。そして2ヶ月後にはどの培地で育ったカルスも内生サイトカイニン量は減少します。しかしこの内生サイトカイニン量の動向は培地のサイトカイニンに関係なく起こる現象であり、葉柄との違いは培地のBAとカイネチンによって引き起こされることになります。さらに培養3ヶ月後のカルスでは、内生サイトカイニン量は分析の結果EmbryogenicカルスよりNon-embryogenicカルスの方がサイトカイニンフリーへ植えかえる前の培地に関係なくサイトカイニンを多く含んでいることが明らかになりました。さらにそれぞれのカルスのイソペンテニル量、ip-typezeatin-type、ip-type/ total cytokininの値もEmbryogenicカルスとNon-embyrogenicカルスでは異なります。これらも培地のサイトカイニンに関係なく起こる現象です。それ故それらの内生サイトカイニン量はウマゴヤシでは胚発生反応を見る確実な指標として考えられます。
興味をもたれた方は是非ご参加下さい。 早川 眞人