2004年度後期 第19・2021回 細胞生物学セミナー

日時:12月7日(火) 16:30~

場所:総合研究等6階 クリエーションルーム

 

Secondary Cell Wall Deposition Causes Radial Growth of Fibre Cells in the Maturation Zone of Elongating Tall Fescue Leaf Blades

 

Jennifer W. Mascadam and Vurtis J. Nelson (2002)

Annals of Botany 89: 89-96

 

 イネ科のtall fescue (Festuca arundinacea Schreb.)の伸長中の葉身は、細胞分裂、細胞身長や細胞の成熟の連続した領域からなっており、発達の勾配が葉の縦軸に沿ってみられる。つまり、葉の先端に向かうにつれて細胞の成熟が進んでおり、成熟の過程を知るのに適している。成熟した葉身は、向軸側と背軸側に表皮を持ち、それが数層の葉肉細胞とその中に広がる維管束のネットワークとを包み込んでいる。

 厚壁組織の一つである繊維細胞の発達についてこれまで、細胞の拡張が停止した後、二次細胞壁が内側に形成され、二次壁沈着はプロトプラストの領域を犠牲にして生じると述べられている。また、葉の重量specific leaf weight (SLW)の増加が成熟領域で組織の二次細胞壁沈着に起因すると仮定されている。この研究で著者らは構造組織の横断面を観察し、細胞壁の面積の測定によってトールフェスクの葉の成熟領域における、二次細胞壁沈着と葉の重量(SLW)の増加の間の相互関係を知ることを目的とした。

 葉舌から遠位へ5,5,45,75と105 mmの横断面のデジタル画像をとり、それは構造組織(繊維束、維管束鞘、木部要素)の細胞数、細胞面積とプロトプラスト面積を決定するために使われた。そしてこれらのデータから、細胞の直径、プロトプラスト直径および面積、繊維束細胞の細胞壁の厚さと面積Cell Wall area (CWA)を算出した。

 算出した組織のCWAはSLWの増加とともに進む細胞壁沈着を確認し、葉舌から75 mm以内の切片の中で増加した。しかしながら、繊維細胞壁の厚さの平均値は、葉舌から15〜105 mmの間で95%増加したが、CWAが増加したように、繊維細胞のプロトプラスト直径は著しい減少をしなかった。従って、トールフェスクの葉身の繊維束中の二次細胞壁沈着は、プロトプラスト直径の減少でではなく繊維細胞の継続的な放射状の拡大の結果として生じることが示唆される。

 また、葉身の成熟領域において、二次細胞壁の沈着によりSLWの増加が最もありそうなところで、葉幅はさらに増加し続けた。これは二次壁を備えたものを含むすべての細胞は、まだ放射状の拡大をできることを示唆している。

 これらの研究は草本植物の二次成長が、一般に認識されていない方法で形式と機能両方の一因になるかもしれないことを示唆している。

 

興味を持たれた方は是非ご参加ください。              中林 いづみ