2004年度後期 第19・20回 細胞生物学セミナー

日時:127() 16:30

場所:総合研究棟6階、クリエーションルーム

Characterization of a Xyloglucan Endotransglucosylase Gene

That Is Up-Regulated by Gibberellin in Rice

 

キシログルカンエンド糖転移酵素/加水分解酵素(XTH)は細胞壁中のキシログルカンの繋ぎ換えや切断反応を触媒する酵素である。キシログルカンを多く含む双子葉植物の細胞壁で、XTHは細胞壁の伸展性の調節し、生長過程に重要な役割をはたすと考えられている。一方、単子葉植物の細胞壁にはキシログルカンが少量しか存在しない。しかし、単子葉植物のイネにおいて、XTHは大きな遺伝子ファミリーを形成していることが推定されている。このことから、単子葉植物においてもXTH遺伝子は植物の生長過程の広い範囲で働くと予想される。

著者らはイネにおいてジベレリンで発現が高まる新規のXTH遺伝子を同定し、OsXTH8と名づけた。OsXTH8遺伝子は完全長cDNAが1298bpで、290個のアミノ酸残基からなるタンパクをコードすることを明らかにした。著者らはOsXTH8遺伝子の働きについて理解を深めるため、@OsXTH8遺伝子発現部位、AOsXTH8遺伝子発現に対する植物ホルモンの影響、BOsXTH8遺伝子発現と成長との相関を解析し、遺伝子の特徴付けを行なった。

@ in situ ハイブリダイゼーションによってOsXTH8遺伝子は葉鞘の維管束で発現していることがわかった。OsXTH8遺伝子の推定プロモーター領域にGUSレポーター遺伝子を融合させ、GUS活性を観察した。in situ ハイブリダイゼーションの結果と同様に葉鞘で活性が観察された。さらに木部と師部を包む維管束鞘、若い根の維管束で活性が観察された。

A XTH遺伝子ファミリーに属する遺伝子の発現は様々な植物ホルモンで制御されることが知られており、複数の植物ホルモンで制御されるXTH遺伝子が存在することもわかっている。そこで、GA3GA3以外の代表的な植物ホルモン(BR、IAA、BA、ABA)で植物を処理し、OsXTH8遺伝子発現を解析した。GA3処理でOsXTH8遺伝子の発現が高まったが、それ以外の植物ホルモンで発現は変化しなかった。次に、半矮性を示すジベレリン合成欠損突然変異体TanginbozuにおいてOsXTH8遺伝子の発現を解析した。TanginbozuはWTと比べOsXTH8遺伝子発現が低下していた。ジベレリンの情報伝達が常にオンになっている徒長型突然変異体slr1では、OsXTH8遺伝子の発現がWTより高まっていた。これらの結果から、ジベレリンによってOsXTH8遺伝子発現が高まることが確かめられた。さらにOsXTH8遺伝子発現と生長に相関があることが示唆された。

B OsXTH8遺伝子の発現がイネの生長に与える影響を調べるために、OsXTH8mRNAの機能を欠失させたRNAi形質転換体を作成した。2ヶ月間生育させた形質転換体は、第2、3、4節間の長さが短くなり、高さが対照より20-50%低下した。OsXTH8遺伝子はイネの生長と発達の間、細胞壁の再構築に重要な働きもつことが示唆された。

 

興味を持たれた方は是非参加ください                 善光 千晶