2004年度後期 第21回 細胞生物学セミナー
日時:12月14日(火) 16:30~
Molecular and genetic
interactions between STYLOSA and GRAMINIFOLIA in the control of Antirrhinum vegetative and
reproductive development
Cristina Navarro1,*, Nadia
Efremova1,*, John F. Golz2, Roger Rubiera1, Markus Kuckenberg1, Rosa Castillo1,
Olaf Tietz3, Heinz Saedler1 and Zsuzsanna Schwarz-Sommer1,†
被子植物の花は、ガク片・花弁・雄蕊・雌蕊という4つのwhorlから構成されている。これらは、ABC 、3つのクラスの調節遺伝子の組み合わせで決定されていることがわかっている(ABCモデル)
。キンギョソウ(Antirrhinum)の突然変異体であるstylosa(sty)、fistulata(fis)、choripetala(cho)、depenteado(des)は、B,C機能の範囲の決定と維持のコントロールを失っているため、花弁様のガク片が生じる。このような異所的な発言がしばしば同時に起こるということは、共通した因子がこれらの発現調節に関与していることを示唆している。
そこで、B,C機能の範囲のコントロールには、STY,FIS,CHO,DESといくつかの補助因子で構成されたタンパク質複合体の関与が予想されるが、別の独立経路でのコントロールも否定できない。この調節機構を明らかにするため著者らはSTY
に着目し、研究を進めた。
まず、STYがArabidopsis遺伝子のLEUNIG(LUG)のオーソログであることを示した。アミノ酸配列から、これらの遺伝子は、酵母などで発見されたGRO/TUP1のco-リプレッサーと似た構造をとっていることが分かった。GRO/TUP1は、様々なDNA結合タンパクと会合し、成長過程で広範囲に機能していることで知られている。そこで、次にYeast
two-hybrid screening法を用いて、STYがどのようなDNA結合タンパクと結合するのか調べた。その結果、植物特異的であるYABBYタンパクファミリーに属するGRAMINFOLIA(GRAM)が見つけられた。これより、STYとGRAMの相互関係を明確にするため、次のような実験を行った。
sty,gram,sty-gram3種類の突然変異体を作成したところ、sty,gram、でみられたわずかな変異がsty-gramで相加的または相乗的に強まった。また、B,C機能の範囲が外側に拡大していたことから、STYとGRAMがB,C機能の発現範囲を抑制する、co-リプレッサーである可能性が高まった。一方で、sty-gramは節間の長さ、葉序、実生の成長にも異常が見られていた。これらの各器官について、詳細に観察したところ、STYとGRAMの相互作用によって葉の向背軸の決定や原基のポジショニングがコントロールされるかもしれないという興味深い結果が得られた。さらに、葉におけるSTYとGRAMの機能を特定するため、詳しく分析を行った。結果、意外なことにSTY維管束の発達に関与していることが分かった。GRAMに関してもSTYと同様の働きを持っていることが示唆された。これらの結果より、STYとGRAMは栄養成長のコントロールに関与するco-オペレーターである可能性が考えられる。続いて、STYとGRAMの相互作用について調べた。In situ
bybridization、immunolocalisationを行ったところ、STY,GRAMの発現は、栄養成長を開始した細胞や花器官原基の細胞でみられたが、その発現は限られていた。加えて、発達後期では発現の重複はみられず、むしろ相補的であることが分かった。このことから、両遺伝子は、発達過程の初期においてのみ相互関係があると思われる。また、DAPI染色の結果、STY,GRAMタンパクが核に局在していることが分かった。しかし、面白いことにGRAMに関しては、かなりの割合で細胞質で残存がみられた。次に、葉の極性の決定に対するSTYの機能を調べるため、Arabidopsis遺伝子で、向軸側の確率を促進するPHB突然変異体を用いた実験を行った。phanは20-22℃で向軸側に変異が起こる。16-17℃で器官が放射状になり、向軸側の形成が乱れて総称な器官が発達する。どちらの条件においても、STYは完全にphbを補うことはできなかった。最後に、styは葉序と葉の傾きに少し変異がみられるが、これは、オーキシンの局在変化が影響していると考えられてきた。このことから、オーキシン輸送のinhibitorであるNPA処理を行った植物の形態を観察した。WTに対してstyでは、本来葉を生じる節間の代わりに茎が形成され、棒状の形態を示した。IAA非存在下での劇的な変異から、STYとIAAは関係性が高いと考えられるが、これを明らかにするためには、さらに研究を進めていく必要がある。
興味を持たれた方は是非ご来聴ください 川田 梨恵子