2005年度前期 第2、3回 細胞生物学セミナー
日時:4月26日(火)16:30〜
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
Biochemical
characterization of the Arabidopsis protein kinase SOS2 that functions in salt
tolerance
Gong, D., Guo, Y., Jagendorf, A.
T.,and Zhu, J . K.(2002)
P l a n t P h y s i o l .130, 256- 264
多くの組織においてシグナル伝達経路に関わるタンパクキナーゼの働きは、成長および発達過程における細胞分裂、代謝、ホルモンや環境シグナルへの応答に対して重要な機能を果たしている。タンパク質キナーゼの調節機構を調べることは、成長と発達における基本的な細胞内プロセスを理解するひとつの鍵となる。
筆者らは、以前にEMS処理をした5万個のシロイヌナズナ種子よりNaClに対し超感受性の変異体を4個体(salt overly sensitive
; sos1-1〜4)を選抜した。
SOS1は、植物細胞の細胞質から細胞膜を介して外側へ向かう、エネルギー依存的Na+輸送においてNa+-H+対向輸送体として機能している。
SOS2は塩分ストレス下のシグナル伝達経路で重要なセリン・スレオニンタンパクキナーゼをコードしている。SOS2は、N末端にSNF1/AMPK様の活性ループがある触媒ドメインを持ち、C末端にはカルシウムセンサーであるSOS3に結合するFISLモチーフを含む制御ドメインを持つ。高塩ストレス条件下では、細胞内のCa2+濃度が上昇し、SOS3がSOS2に結合することによりSOS2が活性化され、キナーゼ活性が出現しSOS1がこれによりリン酸化されることによりNa+/H+対向輸送体活性が十分に発揮されるようになると考えられている。
今回の実験では、SOS2の生化学的特徴をin vitroで明らかにするために、大腸菌内でGST融合タンパク質として活性および不活性SOS2改変タンパク質を発現させ、単離した。SOS3が欠如していても恒常的に活性化されているSOS2突然変異体に着目した。触媒ドメインの活性ループのThr-168がAspに変異したSOS2T168D、活性ループのThr-168がAspに変異し、活性ドメインのFISLモチーフを欠くSOS2T168DΔF、活性ループのThr-168がAspに変異し、完全な制御ドメインを持つSOS2T168DΔ308を実験に用いた。その結果、3つの活性型改変タンパク質では、(1)2価陽イオンが欠如している場合には基質リン酸化を行わなかったが、Mg2+よりもMn2+に対して非常に高い選択性を示し、リン酸化が活性化されたこと(2)基質リン酸化および自己リン酸化には、GTPではなくATPをリン酸塩供与体として利用すること。(3)類似したペプチド基質特異性と触媒効率を持つこと。さらにSOST168DΔ308が、不活性タンパク質SOS2K40Nの転移リン酸化を行わなかったことからSOS2の自己リン酸化は、細胞内反応メカニズムであることがわかった。 興味を持たれた方は是非ご来聴ください。 山影 茜