2005年度前期 第6,7回 細胞生物学セミナー

日時 524日(火)1630

場所 総合研究棟6階 クリエーションルーム

 

Xyloglucan Endotransglycosylases Have a Function during the Formation of Secondary Cell Walls of Vascular Tissues

 

Veronica Bourquin,Nobuyuki Nishikubo,Hisashi Abe,Harry Brumer,Stuart Denman,

Marlin Eklund,Maria Christiernin,Tunla T. Teeri,Björn Sundberg,and Ewa J. Mellerowicz

 

The Plant Cell, Vol. 14, 3073–3088, December 2002

 

XET(Xyloglucan transglycosylase エンド型キシログルカン転移酵素)は、キシログルカンの切断や再結合といった、細胞壁の生合成の多くの過程に影響を与えている酵素として知られている。しかし、維管束での機能、特に二次壁構築過程でのXETの働きは、まだ明らかになっていない。そこで、著者らはポプラの茎を用い、その師部及び木部の二次壁におけるXETの機能について研究を行った。

著者らはまず、in situでXGO-SR(スルホローダミン標識化キシログルカンオリゴ糖)を用いてXETの活性を測定した。結果、形成層、木部繊維、師部繊維でXETの活性が確認された。次いで、双子葉類で見られるフコシル化したキシログルカンを認識するモノクローナル抗体であるCCRC-M1抗体を用いて、キシログルカンを標識し、XGO-SRで標識したものと比較した。すると、両者の間には良い相関関係が見られた。しかし、例外として、XET活性が見られなかった成熟した師管細胞で、キシログルカンが豊富に存在することが明らかとなった。そこで、より正確なキシログルカンの分布を調べるため、ポプラの超薄切片を免疫金標識法で処理し、透過型電子顕微鏡下で観察した。成熟した師部細胞では、キシログルカンは壁内部の真珠光沢を持つ層に蓄積していることが明らかになった。また、標識されたキシログルカンの量を半定量的に測定したところ、もっとも増加したのは二次壁の沈着時であった。

次に、XETのサブファミリー1の1つで、ポプラの二次維管束繊維内に最も多量に含まれるXETのアイソフォームであるPttXET16Aをクローニングし、その発現の研究を行った。結果、PttXET16A遺伝子は、二次壁構築時の繊維で複製され、局在化することが明らかとなった。

これらの結果から、二次木部及び師部のいくつかの細胞型で、二次壁の沈着中にXETの活性があるということを明らかとなった。そして、キシログルカンは細胞型によって、2つのパターンで沈着することを示した。1つ目は二次木部及び師部繊維で見られるもので、キシログルカンは複合細胞間層及び、一次壁と二次壁の結合部内に沈着する。このことから、著者らはキシログルカンが、一次壁と二次壁のミクロフィブリルの架橋構造を強化する働きを持つと仮定した。2つ目は師管細胞で見られるもので、キシログルカンは師管細胞の真珠光沢のある層に豊富に沈着することが明らかになった。また、PttXET16Aの局在から、二次維管束繊維にキシログルカンが結合するときに、XETが関わっていることが示唆された。

 

 

興味のある方はぜひご参加ください。       

 須藤絵理子