2005年度 第13、14、15回 細胞生物学セミナー
日時:6月21日(火) 16:00〜
場所:総合研究棟6F クリエーションルーム
Graviperception in
growth inhibition of plant shoots under hypergravity conditions produced by
centrifugation is independent of that
in gravitropism and may
involve mechanoreceptors
Kouichi Soga ニ Kazuyuki
Wakabayashi Seiichiro Kamisaka ニ Takayuki Hoson
Received: 25 August 2003 / Accepted: 28 November 2003 / Published online: 10 January 2004 SpringerVerlag 2004
過重力環境下では、細胞壁の肥厚だけでなく、キシログルカンの分解抑制による細胞壁の伸展性の低下により、shootの伸張生長が抑制されることがわかっている。筆者らは、成長抑制に関わる重力受容が重力屈性とは異なる重力受容によるもので、その受容が機械刺激受容チャネルによりなされているのではないかという仮定のもと、過重力下における成長抑制の重力受容のメカニズムについて、シロイヌナズナの胚軸とアズキの上胚軸を用いて実験をおこなった。
シロイヌナズナのミュータントで、重力屈性を全く示さないsgr-1と、重力屈性の応答が弱いpgm-1を300gの過重力環境下においた結果、両方のミュータントにおいて、成長抑制が引き起こされた。このことから、重力環境が誘導する苗条の生長抑制に関する重力受容は、重力屈性とは独立した、無関係のものであることが示唆された。さらに、機械刺激受容チャネルの阻害剤であるガドリニウム、もしくはランタン溶液で処理した結果、過重力によって引き起こされる、胚軸長の抑制、細胞壁の伸展性の低下、細胞壁多糖の単位当たりの増加、細胞壁の伸展性に関わるキシログルカンの分子量の増加などの作用が、阻害されることがわかった。また、キシログルカンの分解酵素活性の低下に関与するアポプラストのpHの上昇も抑制された。このことから、植物が細胞質膜にある機械刺激受容器によって、過重力の刺激を受容していることが示唆された。このように、過重力により誘導される生長や細胞壁の性質の変化が、細胞質膜の機械受容器の影響を受けていることが示唆された。
これまでの研究の結果、細胞壁の性質や胚軸生長と重力には直接的な関係が見られた。このことから植物は苗条の生長率を規定するために、重力のような認知したシグナルを役立たせていることが予想される。さらに、300gの過重力は植物にとって異例な刺激ではなく、この重力の大きさに対する応答は、典型的な生理的応答であると解釈できた。地球上で生長や細胞壁の性質を規制している1g重力もまた、細胞質膜により認識されていることを示しているといえるだろう。
興味を持たれた方は、是非ご参加ください。来聴を歓迎します。 安藤名央子