2005年度 前期16・17回 細胞生物学セミナー

日時:6月28日(火) 16:30~

場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム

 

Xyloglucan Oligosaccharides Cause Cell Wall Loosening by Enhancing Xyloglucan Endotransglucosylase/Hydrolase Activity in Azuki Bean Epicotyls

アズキマメ上胚軸におけるキシログルカンオリゴ糖はキシログルカン転移酵素/加水分解酵素の活性を促進することによって細胞壁のゆるみを引き起こす。

Tomomi Kaku, Akira Tabuchi, Kazuyuki Wakabayashi and Takayuki Hoson

Plant and Cell Physiology, 2004, Vol. 45, No. 1 77-82

 

 キシログルカンは双子葉植物の一次細胞壁の主要なヘミセルロース多糖類である。細胞壁内でキシログルカンはセルロースミクロフィブリルに特異的に水素結合している。その一部は隣接するセルロースミクロフィブリル間を架橋している。それによって、キシログルカンは細胞壁の力学的強度に影響を与え、細胞壁構築に重要な役割を担っていると考えられている。

 エンドウを用いた実験では、キシログルカンオリゴ糖(以下、XGO)を加えることによって細胞壁の力学的性質が変化し、細胞伸長、そして植物体全体の伸長成長が促進された。このXGOによる細胞壁のゆるみの過程には、キシログルカンの切断・再結合に関わる、キシログルカン転移酵素/加水分解酵素(以下、XTH)が関与するであろうと推測されてきたが、これまでにこの仮説を支持する直接的な証拠は見つかっていなかった。そこで著者らは実験材料にアズキマメ上胚軸のフック下から単離した表皮組織を用いて、キシログルカンオリゴ糖存在下での細胞壁に対するXTHの影響を調べることにした。

表皮組織をXGOで処理したところ、XGO濃度の増加に伴い、細胞壁伸展性が増加した。また、XGO濃度が増加するとともに、表皮組織の細胞壁内のキシログルカンの平均分子量の減少が示された。この結果より、アズキマメ上胚軸でもエンドウ同様、XGOによる細胞壁のゆるみが起こることが確認された。

次に、メタノール処理によって細胞壁に含まれる酵素の作用を除去した表皮組織を用いて、細胞壁に対するXGOとXTHの影響を調べた。XGO濃度が50~200μMのとき、XTH処理した表皮組織の細胞壁伸展性は増加した。また、XTH処理した表皮組織の細胞壁内のキシログルカン分子量を調べたところ、XGO濃度が50μMと100μMのときキシログルカンの分子量は有意に減少した。これらの事実は、高濃度XGO存在下では、XTHは細胞壁のゆるみを引き起こすことを示唆している。さらに、XTH活性に対するXGOの影響を調べたところ、XGO濃度の増加に伴い、XTH活性の増加がみられた。

以上の結果は、XGOはXTH活性を促進することによってキシログルカンの分解を促進し、アズキマメ上胚軸の細胞壁伸展性を増加させることを示唆している。

 

興味のある方は是非ご参加ください。 西本 真奈美