2005年度 前期第18,19回 細胞生物学セミナー

日時:7月5日(火)16:30~

場所:総合研究棟6F クリエーションルーム

A dynamic action cytoskeleton functions at multiple stages of clathrin-mediated endocytosis

Yarar, D., Waterman-Storer, C. M., and Schmid, S. L. (2005)

Mol. Biol. Cell 16: 964-975

 

 哺乳類細胞におけるクラスリンを介したエンドサイトーシス(Clathrin-Mediated Endocytosis: CME)は、栄養分の取り込み、細胞表面の受容体ダウンレギュレーション、そしてシナプス小胞のリサイクルといった、細胞の様々な生化学的プロセスにとって極めて重要である。CMEはまずクラスリンやアダプタータンパク質が細胞質から供給され、クラスリン被覆ピット(Clathrin-Coated Pit: CCP)形成のために原形質膜(Plasma Membrane: PM)に集合する。その後PMが細胞質側に陥入し、そのネックで狭窄されてCCPを形成し、連続してPMから括りきられ、クラスリン被覆小胞(Clathrin-Coated Vesicle: CCV)を生じる。最終的に、このサイクルはクラスリン被覆の散開によって完了する。

 このCMEは現在までに非常に多くのエンドサイトーシスアダプタータンパク質が直接・間接的にアクチンダイナミクスを調節することや、アクチンの集合が空間・時間的にエンドサイトーシスと調和することが示されてきている。しかし、CCV形成におけるアクチンの直接的な機能を示す証拠は不明瞭で、不十分である。なぜならばこれまでの生化学的な研究は、受容体結合リガンドを内方化する細胞の集団的かつ平均的な能力の測定であり、そこで観察された部分的な阻害効果には曖昧な解釈がなされたためである。対照的に、これまでの顕微鏡解析は阻害剤を用いた研究が行われていないために、CMEにおけるアクチンの機械的な働きは不明瞭である。そこで、我々はCMEに対するアクチンの重合/脱重合ダイナミクスの働きを知るために、定量的顕微鏡法と生化学的な方法を平行して研究に用いた。

 実験にはクラスリン軽鎖-DsRed融合タンパクを発現するSwiss 3T3繊維芽細胞を用いた。全反射照明蛍光観察法と広角落射蛍光観察法を同時に用いたタイムラプス解析を行ったところ、多くのクラスリン被覆構造(Clathrin-Coated Structure: CCS)の分布がアクチンの蛍光シグナルと重ならず、アクチンとCCSの蛍光シグナルの重なりはCCSが内方化される際にみられた。またアクチンの重合を妨げ、アクチンの脱重合を促進するlatrunculin A、またはアクチンフィラメントを安定化し、重合を促進するjasplakinolideといった膜透過性薬剤でF-アクチンの集合/散開を攪乱した場合、CCSダイナミクスの動きはほぼ完全に停止した。さらに、エンドサイトーシスサイクルのステージに特異的な生化学的解析や、定量的蛍光/電子顕微鏡解析を行ったところ、F-アクチンダイナミクスが、CCPの形成、狭窄、そして内方化を含んだCCV形成という複数のステージに明らかに必要であり、加えてF-アクチンダイナミクスが、大きなCCSからのCCSの分割、小さなCCS同士の統合、そしてCCSのPM上での横方向への運動という別種のCCSの挙動に必要であることが示された。

 これらの結果から、アクチンがクラスリンを介したエンドサイトーシスにおいて鍵となる極めて重要な働きをすることが示された。

 

                                                興味をもたれた方は是非ご参加ください。          須田 甚将