2005年度 後期第1・2回 細胞生物学セミナー

日時:10月11日(火)16:30~

場所:総合研究棟6F クリエーションルーム

Microtubule plus-ends reveal essential links between intracellular polarization and localized modulation of endocytosis

during division-plane establishment in plant cells

Dhonukshe, P., Mathur, J., Hülskamp, M. and Gadella, Jr., T. W.J. (2005)

BMC Biol. 3(1):11

 

   細胞壁で覆われ固定された植物細胞において、細胞分裂面の厳密な調整が組織や器官の形態形成での鍵となっている。G2期から前期にかけて植物特異的な微小管(Microtubules; MTs)の配向である分裂準備帯(Pre-Prophase Band; PPB)が核を取り囲むようにして現れる。このPPBは細胞質分裂前にほぼ消えてしまうにもかかわらず、体細胞分裂の終盤で細胞板が親の細胞壁とつながる部位を正確に予測し、フラグモプラストが分裂予定線を維持することで細胞分裂がなされる。しかし、このPPBの制御メカニズムとPPB構築が将来の細胞分裂面の決定にどこまで影響するかは不明である。またPPB形成と同時に1.細胞の中央へと向かう核の移動、2.運動性細胞質繊維の一つである膨大な数の細胞質微小管(Endoplasmic MTs; EMTs)の動態を伴い、PPBの配置に核が関与すること、核がMTsによって配置されることが示唆されている。しかし植物EMTsの極性とダイナミクスに関する情報はなく、核・PPBとの関係におけるEMTsの役割はわかっていない。そこで本研究において筆者らはタバコBY-2細胞において、MTsプラス端をラベルするGFP-AtEB1をはじめ各オルガネラをラベルする分子マーカー、さらに数種の阻害剤を用いて、PPB形成におけるEMTsの役割と連続する有糸分裂を詳細に解析した。

   その結果、MTsプラス端の観察から、preprophaseで核-表層間を結ぶように核から表層へ、また表層から核へと双方向性のEMTsが出現し、MTsのバンドリングメカニズムによって表層から核へ向かうMTsが核から表層へ向かうMTsを表層の選択的なターゲッティングのために誘導すること、加えてこのEMTsの綱引きによって核を細胞の中央に配置することが示唆された。次に種々のオルガネラマーカーと微小管脱重合剤、アクチン重合阻害剤を用いた解析から、EMTsがオルガネラ運動の維持におけるアクチンの作用を損なわないことが示唆され、細胞内の運動性と区画化が区別されていることが暗示された。またG2-M期に移行するにつれてPPBとエンドサイトーシス小胞の帯がほぼ共局在し、紡錘体が形成されている間維持された。さらに有糸分裂後期段階で起こる現象を解析したところ、終期でEMTsが主にPPBの存在した表層領域を探り当て、このとき表層に近接するEMTsがエンドサイトーシス小胞の帯と共局在した。またエンドサイトーシスを阻害するNPA(Naphthylphtalamic acid)で処理したところ、異常なPPBや分裂面を誘起した。加えて動物細胞において微小管プラス端複合体がタンパクの輸送体として示されていることから、preprophseにおいてEMTsがEMTプラス端誘導タンパクをPPB領域に沈着させることで、終期におけるエンドサイトーシスによってフラグモプラストEMTsを誘導し、さらにこの際再度タンパクを沈着させるためにpreprophaseでEMTプラス端を誘導すると推測した。

   以上のことから極性の確立-エンドサイトーシス-微小管プラス端の誘導-さらなるエンドサイトーシスというフィードバックループが植物細胞における細胞分裂の分裂面の決定と構築に不可欠であると考えられた。

                                        興味を持たれた方はお気軽にご参加ください。      須田 甚将