2005年度 後期第3,4回 細胞生物学セミナ-

日時:10月18日(火)16:30~

場所:クリエーションスペース

 

Multiple Protein Regions Contribute to Differential Activities of YABBY Proteins in Reproductive Development

 

Robert J. Meister, Harriette Oldenhof, John L. Bowman, and Charles S. Gasser

Plant Physiology, February 2005, Vol. 137, pp. 651–662,

 

 

YABBYタンパクはCysを含むzinc finger モチーフとH-L-H構造と似たYABBY領域を持つことで知られている。いくつかのYABBY遺伝子のメンバーは似た発現パターンを共有している。例えば、FILAMENTOUS FLOWER (FIL)とYABBY3 (YAB3)はほとんどの側生器官で発現する。しかし、一方で、INNER NO OUTERINO)の発現は他のYABBY遺伝子が検出されない外珠皮に限られている。また、背軸側の細胞の分化を促進するCRABS CLAWCRC)は本来なら背軸側には含まない領域である蜜腺や雌蕊に発現し、それらの形成や決定に必要となる機能を持つことが分っている。このように、YABBYファミリーのメンバーは極性を決定するための機能と、個々に特有な機能の2つの機能を獲得してきたといえる。

 同じファミリーに属しながらも異なる発現パターンを示す遺伝子の機能に関して、著者らは植物における転写因子機能の多様化のメカニズムのモデルとして、YABBY遺伝子ファミリーに注目した。組織特異的かつ全細胞で安定して生産されるプロモーターを用いて、本来のYABBYコード配列とキメラYABBYコード配列の示す形態的な特徴を観察した。

生殖器官における2つのYABBY遺伝子、CRCINOはそれぞれ蜜腺の形成と心皮の融合、胚珠の発達に関与している。胚珠の外珠皮の非相称な発達に関してはINOSUPERMANSUP)2種間での相互作用が影響している。FILYAB2YAB3CRC、はINO突然変異体であるino-1の外珠皮の発達を復帰することができるが、SUPの影響を抑制すると反応しないことが分った。しかし、INOFILYAB3は蜜腺と雌蕊に生じたCRCの欠失を補うことはできなかった。

 キメラのコード配列の解析では、3つの推定されるタンパク領域のうち少なくとも1つにおいては遺伝子の機能の相違を維持していることが示唆された。また、zinc fingerモチーフはおそらくいくつかの発現領域における近接の保存配列に依存していることが示唆された。これらの結果から、著者らは発現領域の相違に加えて、コード領域の変換によるタンパク質間の相互作用で起こる相違が、YABBYタンパクファミリーの機能の多様性を作り出す重要な要因となっている可能性を示唆した。

 

 

興味をもたれた方は是非ご来聴ください。      川田梨恵子