2005年度 後期第3・4回 細胞生物学セミナー
日時 : 10月18日(火) 16:30〜
場所 : 総合研究棟6階 クリエーションルーム
Identification of Novel
Genes in Arabidopsis Involved in Secondary Cell Wall Formation Using Expression
Profiling and Reverse Genetics
Browm D. M., Zeef L. A. H., Ellis J.,
Goodacre R., and Turner S. R. (2005)
Plant Cell, 17, 2281-2295
植物の細胞壁は、細胞伸長の調節、病原菌や有害生物に対するバリアー、植物体の物理的な性質の決定など多くの機能を持っている。その細胞壁の機能には細胞壁成分の変化が反映される。シロイヌナズナにおいて、細胞壁の合成、再構築、ターンオーバーにはゲノム中の15%もの遺伝子が関与する事が示唆されており、そこには800以上の糖質関連酵素(carbohydrate active enzymes)が含まれている。この糖質関連酵素の割合は他の植物以外の生物と比較しても大変大きな値であり、細胞壁の合成、分解、再構築に糖質関連酵素が必要であるということを示唆している。他の多くの遺伝子もリグニンなどの他の細胞壁成分の合成に必要であり、細胞壁の合成と変化に関与する遺伝子の機能を同定および決定することは重要な挑戦である。
リグニン化した二次壁細胞の沈着は細胞のサイズと形が決定した後に起こる。木材や植物繊維の主成分である二次細胞壁の合成を理解することは生物学的にも経済的にも大変重要な意味を持っており、シロイヌナズナはそれを理解するうえですばらしいモデルである。これまでにセルロースやリグニン合成に関与する遺伝子はもちろん、二次細胞壁合成の調節に関与する遺伝子を同定するために用いられてきた。以前の研究において、二次壁形成に関与するいくつかの遺伝子が単離されている。導管を通じて水を輸送するときの陰圧に耐えることができず導管要素が崩壊するという表現型で特徴づけられる
irregular
xylem (irx) 変異体はそれらの遺伝子の変異によるものひとつである。しかしながら、同定された遺伝子のリストは網羅的なものではない。
そこで本研究では、二次壁形成の起きている発達中の茎と胚軸から得られたマイクロアレイデータより、セルロース合成に関与する遺伝子
IRREGULAR
XYLEM1 (IRX1)、IRX3 と似た発現パターンを示した数百の遺伝子を同定した。また公に入手できるマイクロアレイデータも利用することで、16の遺伝子が選択された。これら16の遺伝子については逆遺伝学的な解析を行い、その機能について解析した。作成された16遺伝子についての変異体ラインのうち9つのラインの表現型は野生型と区別することができた。そのうち7つのラインについてははっきりと
irx 表現型を示したので、irx 6-12と表した。解析に用いたマーカー遺伝子がセルロース合成遺伝子ファミリーのメンバーであったので、これらの変異体のいくつかはセルロース合成に欠陥があるに違いないと考え、次に全ての変異体のラインについてセルロース含量を計測した。COBRA遺伝子ファミリーのメンバーであるCOBL4の変異体である irx6 は非常に大きいセルロース含量の減少を示した。またirx7、irx8、irx9 はわずかではあったが有意に減少していた。このことからセルロース含量に欠損が見られなかった遺伝子については、二次壁形成に必要な潜在的で新しい他の経路に関与していることを示唆している。
興味をもたれた方は是非ご参加ください。来聴を歓迎します。 玉置 大介