2005年度後期 第7,8,9回 細胞生物学セミナー
日時:11月1日(火)16:00〜
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
The
PIN auxin efflux facilitator network controls growth and patterning in Arabidopsis roots
Blilou, I., Jian Xu, J.,
Wildwater, M., Willemsen, V., Paponov, I., Friml, J., Heidstra, R., Mitsuhiro
Aida, M., Palme, K and Scheres, B. (2005)
Nature 433:39-44
植物の生長を調節するオーキシンの局所的な蓄積は、シロイヌナズナの根におけるパターン形成に影響し、側根とshoot誘導原基の生長と発達に影響を与えている。しかしながら、オーキシンがどのようにしてパターン形成と器官生長を同時に調節し、またどのようにしてオーキシンの分布が原基固有の方法によって安定しているのかは、未だ明らかになっていなかった。
そこで筆者らは、pin1、pin2、pin3、pin4、pin7すべての変異体の組み合わせを発生させ、総合的な変異解析を行うことで、初期の根における細胞分裂、細胞肥大生長の調節とPIN遺伝子との関わりを研究した。それによって、5つのPIN遺伝子が協調的にオーキシンの分配をコントロールしているということが示された。
まず、細胞分裂へPIN遺伝子の影響を検討した結果、求基的なオーキシン輸送とコルメラ細胞からの側部への再分配は、分裂組織の維持に重大な役割を持つことが示された。また、PIN遺伝子活性の調節が、分裂組織のサイズと伸長域のサイズ、そして最終的な細胞サイズに別々に影響していることも明らかになった。
さらに、PINタンパクが根の末端領域において、根幹細胞分化の主な決定因子であるオーキシン誘導性のPLETHORA(PLT)遺伝子の発現を集中させ、静止中心と幹細胞の位置を指定していることが示された。次いでPLT遺伝子が遠位の根端におけるオーキシン最大濃度の安定化のためのPIN遺伝子発現に必要であることも観察された。このことから、PIN遺伝子の複合的な作用が、根幹細胞分化の主な決定因子である PLT遺伝子の発現ドメインを制限することにより、パターン形成に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
オーキシンの輸送は、シロイヌナズナの根の分裂組織のパターン形成の主要な一因であり、末端の細胞の形態にも親密な相互関係をもつ。さらに、胚発生中においても、オーキシン輸送が発現調節を行っていることが示された。これらのように筆者らのデータは、根の原基のパターン形成と生長を調節しているオーキシン輸送促進体と、根の運命決定の相互作用ネットワークの存在を明らかにしている。
興味を持たれた方は是非ご来聴ください 安藤 名央子