2005年度 後期第10、11回 細胞生物学セミナー

日時:11月8日(火) 16 : 30~

場所:総合研究棟6F クリエーションルーム

CvADH1, a Member of Short-Chain Alcohol Dehydrogenase Family, is inducible by Gibberellin and Sucrose in Developing Watermelon Seeds

Joonyul Kim, Hong-Gyu Kang, Sung-Hoon Jun, Jinwon Lee, Jieun Yim and Gynheung An1

Plant Cell Physiol.44(1):85-92(2003)

 

発達中の種子はジベレリンを多く含み、これまで生合成経路などジベレリンに関する研究で用いられた。ジベレリンは種子形成において重要な役割を果たしていることが知られているが、内胚乳や珠心、内珠皮の退化など種子形成におけるジベレリン作用の詳細な分子メカニズムは解明されていない。

そこで著者らは発達中の種子で特異的に発現する遺伝子とジベレリン、およびスクロースとの関係を調べた。スイカCitrullus vulgaris Thunb.var Country Home)の未熟な種子のcDNAライブラリーから種子に特異的なESTクローンを単離し、発現をみると、受粉後10日の種子で強く発現した。また、このESTクローンは受粉後 6日から発現し、その後、15日まで高レベルを維持した。ESTクローンは断片的なものであったので全長のORF(Open Reading Frame)を単離し、解析したところ短鎖アルコール脱水素酵素/還元酵素(SDR)ファミリーと高い相同性を示すタンパク質をコードしていることがわかった。著者らはこの遺伝子にCvADH1と名づけ、受精してできた種子と単為結実させた種子で発現を比較した。

まず、受精した種子では母性組織である珠心の退化がみられたが、単為結実した種子ではCvADH1の発現は受精した種子でのみ受粉後10日に発現がみられた。このことからCvADH1は接合子組織で発現するのかと思われたが、受精した種子を3等分し、部位による発現を比較した結果、部位による発現の違いはみられなかったのでその可能性は排除された。そこで、in situ ハイブリダイゼーションで発現部位をみると、どちらも母性組織である珠心組織と輸送細胞で遺伝子発現がみられた。また、種子の形成にはジベレリンとスクロースが深く関わっていることから内生ジベレリン量が少ない単為結実の種子にGA3とスクロースを与え、その影響について調べた。GA3では処理から30分で発現が最大に達するという速い反応を示し、スクロースでは徐々に発現の増加がみられ、処理から6時間で最大に達するという遅い反応を示した。

これらのことからCvADH1は珠心組織や輸送細胞といった母性組織で選択的に発現し、珠心の退化に関わり、しかも、発現に関わるシグナルは接合子組織から発せられているのではないかということが示唆された。また、CvADH1GA3によって誘導され、スクロースが母性組織で重要な役割を果たしているということが示唆された。

 

興味を持たれた方は是非ご来聴ください。   木下久子