2005年度  後期  12・13回 細胞生物学セミナー

日時:1115日(火) 16:30

場所:総合研究棟6階 クリエーションスペース

 

XTH acts at the microfbrilmatrix interface during cell elongation

 

Kris Vissenberg, Stephen C. Fry, Markus Pauly, Herman Hofte and Jean-Pierre Verbelen

Journal of Experimental Botany, Vol. 56, No. 412, pp. 673683, February 2005

 

種子植物の一次壁は、ヘミセルロース、ペクチン、構造タンパク質などからなるマトリックスに、骨組みとなるセルロース繊維が埋め込まれた構造をしている。ヘミセルロースとして、キシログルカンを多く含む双子葉植物の細胞壁では、XTH(キシログルカン転移酵素・加水分解酵素)が、キシログルカンの繋ぎ換えや切断反応を触媒する酵素として、生長過程に重要な役割を果たしている。

XTHは、キシログルカンオリゴ糖を基質として、キシログルカンの分解を促進することが示唆されている。著者らはスルホローダミン標識されたキシログルカンオリゴ糖(XGO-SR)を使い、Arabidopsisやタバコの根の細胞壁、そして培養されたタバコの葉肉細胞でXTHの活性を調べた。

拡散性成長する細胞壁内では、XTH活性のパターンはキシログルカンの局在化とは異なった、「フィブリル」パターンを示す。一方、球形の培養細胞ではフィブリルの蛍光パターンは、最終的な配向が見られなかった。しかし、細胞が皮層のミクロフィブリルの再配列や、付随的なセルロースの沈着といった特徴を伴う伸長を始めると、配向は伸長軸に鉛直な方向に変わることが確認された。

 そこで、著者らはこの「フィブリル」パターンがどのようにできるのかを、それぞれの組織や細胞に薬品処理を行うことで調べた。DBC(セルロース沈着阻害剤)やオリザリン(微小管脱重合阻害剤)では、「フィブリル」構造の消失が見られた。これにより、ミクロフィブリルの重合と、セルロースの沈着を阻害すると「フィブリル」によって配列されたXTHの活性を強く阻害するということがわかった。ところが、ラトラクリンBによるアクチン重合の阻害に対しては、酵素活性の強さを減少させるだけだった。セルロースの合成を抑制させる突然変異体(rsw1-10)を使い、同じようにXTHの活性を定量したところ、活性は野生型に比べ低かった

次にキシログルカンの局在をUEAIUlex europaeus agglutinin I)及びTPA(Tetragonolobus purpureus agglutinin)を使い調べた。すると、両方とも伸長帯で蛍光が見られたが、「フィブリル」構造は見られなかった。

さらに、XTHの活性によってXGO-SRで標識された組織を、キシログルカン特異的エンド型グルカナーゼ(XEG)によってキシログルカンを遊離、抽出した後、蛍光を測定した。すると、蛍光は減少したが、「フィブリル」の発現は観察された。

これらの結果は、伸長中の細胞で、細胞壁の新しく合成されたキシログルカン分子の結合、キシログルカンによって新しく沈着したミクロフィブリルを繋ぐこと、現存しているセルロース・キシログルカンネットワークの再構築に関わっている可能性を示した。また、オリゴ糖類の結合により、キシログルカンはセルロースミクロフィブリルを修飾し、加水分解酵素を近づきにくくするということも示唆された。

興味を持たれた方は、ぜひご来聴ください。

須藤 絵理子