2007年度前期 第2回 細胞生物学セミナー
日時:5月1日(火)17:00〜
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
Mechano-sensitive
orientation of cortical microtubules
during
gravitropism in azuki bean epicotyls
Ikushima, T.,
and Shimmen, T.(2005)
Plant Research, 118, 19 -26
アズキ上胚軸における、重力屈性時の機械感受性の表層微小管の配向
植物では、微小管は生長や形態形成に重大な役割を担っている。間期の間、微小管は原形質膜のちょうど内側に存在し、表層微小管(cMT)として知られている。cMTは、細胞壁のセルロースミクロフィブリルの配向を制御することで、細胞の伸長方向の制御に関与している(Giddings
and Staehelin 1991; Delmer 1999; Emons and Mulder 2000)。そのため、偏差生長により生じる屈曲時のcMTの配向は、大規模に研究されてきている。今回の研究では、重力屈性時のcMTの配向をアズキ上胚軸の表皮細胞を用いて調べた。
アズキ上胚軸の表皮細胞には大きく分けて、縦、横、斜め、ランダムという4種類の配向のcMTが観察された。重力屈性前ではこれらは同頻度で観察されたが、重力刺激処理3時間後には、上胚軸の上部(圧迫部)では縦の配向が70%を占め、下部では横の配向が70%以上を占めることがわかった。cMTはセルロースミクロフィブリルの配向を調節している(Shibaoka1994)ことから、配向の変化は、上方向への屈曲を促進するための下部での細胞の伸長を支持するものだと考えられる。
次に、金属のワイヤーを用い、強制的に重力屈性を阻害し、まっすぐにした状態での微小管の配向を調べた。その結果、上胚軸の上部、下部の両方でcMTの配向の変化は起こらなかった。また、強制的に上胚軸を下向きにし、重力刺激を与えた場合には、上部(伸長部)では横の配向が増加し、下部(圧迫部)では縦の配向が増加した。
NPA(オーキシン阻害剤)を用い、重力屈性を完全に阻害した状態で強制的に下向きにする実験を行った場合でも、上部(伸長部)で横の配向が増加し、下部(圧迫部)で縦の配向に増加傾向が見られた。このことから、cMTの配向の変化は、重力屈性を阻害した場合にも引き起こされることが示唆された。
さらにGdCl3(機械受容チャネル阻害剤)で処理した場合にも同様の実験を行ったところ、重力屈性は正常であったが、cMTの配向の変化は見られなかった。ワイヤーを用い、強制的に上胚軸を下向きにした場合でも、配向の変化は見られなかった。
以上の結果から、cMTの配向は屈曲により調節されているのであり、重力刺激そのものにより調節されているのではないこと、さらに機械受容チャネルがcMTの配向の変化に関与していることが示唆された。
興味をある方は、ぜひご来聴ください。
安藤名央子