2007年度 第三回 細胞生物学セミナー
日時:5月8日(火) 17:00〜
場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム
 
Modulation of ethylene responses affects plant
salt-stress responses
 
Cao, Wan-Hong, Liu, Jun, He, Xin-Jian, Mu, Rui-Ling, Zhou, Hua-Lin,  
Chen, Shou-Yi,  and Zhang, Jin-Song(2007)
Plant Physiol. 143: 707 - 719
 
エチレン応答の調節は植物の塩分ストレス応答に影響を与える
 
 
 エチレンのシグナル伝達は植物の生長と発達についての多くの局面で重要な役割を果たしているが、非生物的なストレスへの応答におけるその機能は未知の部分を多く残したままである。私たちはエチレンのシグナル伝達の変化が植物の塩分ストレスへの応答に影響することを報告する。
 これまでエチレンにより黄化した芽生えの三重反応に関する変異体の解析に基づき、エチレンのシグナル伝達経路はシロイヌナズナにおいては、エチレン受容体とCTR1、EIN2、EIN3や他の要素を含むものとして提唱されてきた。さらにシロイヌナズナにおいて5つのエチレン受容体が発見され、それらは構造上の特徴から2つのサブファミリーに分類された。エチレン受容体の相同遺伝子はトマトやタバコなど他の植物でも単離されている。タバコ由来のサブファミリーⅡエチレン受容体相同遺伝子NTHK1(タバコヒスチジンキナーゼ1)は、塩分ストレスにさらされたときに発現が誘導される。私たちはNTHK1遺伝子をシロイヌナズナに導入し、NTHK1過剰発現組み換え体を作出した。NTHK1組み換え体は塩分ストレス下での電解質の漏出や根の生長に関する表現型の変化などを示し、このことからNTHK1遺伝子がシロイヌナズナに見かけ上の塩分感受性を高めたと判断できる。またエチレン前駆物質である1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)は、野生型と組み換え体のいずれにおいても塩分感受性の表現型を抑制した。
 さらにさまざまなエチレン応答変異体においてそれらの塩分ストレスへの応答を調べた。機能獲得型変異体においては塩分感受性が高まった。またエチレンのシグナル伝達の中心的な要素であるEIN2の変異によって植物体は塩分感受性になり、EIN2を媒介するシグナル伝達が植物の塩分耐性に有益であることを示した。NTHK1遺伝子あるいは機能獲得型である受容体の過剰発現組み換え体においては塩分応答性の遺伝子AtERF4Cor6.6の発現が活性化した。これらの発見はエチレンのシグナル伝達が植物の塩分耐性に必要とされることを意味している。
 
 
お気軽にご来聴ください
前田綾子