2007年度前期 第4回 細胞生物学セミナー

日時:5月22日(火)17:00~

場所:総合研究棟6階 クリエーションルーム

 

The AUXIN RESPONSE FACTOR2 gene of Arabidopsis links auxin signaling,

cell division, and the size of seeds and other organs

Schruff, M. C.,Spielman, M., Tiwari, S., Adams, S.,Fenby, N.,Scott, R. J.(2005)

Development 133,251-261

 

     シロイヌナズナにおけるオーキシン応答因子2遺伝子(ARF2)はオーキシンシグナル、細胞分裂、

種子およびその他の器官のサイズを関連づける

 

種子は植物の生殖を研究する上で大変重要であるにもかかわらず、最終的なサイズと重さを決める遺伝的なメカニズムはわずかしかわかっていない。種子の発達においては、娘細胞を生じる胚と、胚形成や発芽の際に親の種子から胚に栄養分を供給する胚乳が重要な役割を持つ。種子の組織で第三に主要なものが種皮である。雌性に由来する種皮は、受精した後、胚嚢を封入する外被から分化する。モデル植物であるシロイヌナズナにおいては、成熟した種子の胚乳細胞の膜は1枚しか無いにもかかわらず、胚乳の増殖は種の重さ、胚のサイズに関連することが分かっている。種子のサイズのコントロールには胚と胚乳の接合子、母性に由来する種皮、親の植物体などの間の複雑な相互作用が関係する。これまでに、いくつかの作物で、QTL解析から種子のサイズに影響する遺伝子座がいくつか同定されているが、今のところクローン化されているものはない。一方突然変異体の研究から種子のサイズに影響する遺伝子は同定されているが数はまだ少ない。筆者達は種子のサイズをコントロールするプロセスについてさらに明らかにしていくために、シロイヌナズナにおいて種子が大きく変異する変異体をスクリーニングし、単離した。この変異体をmegaintegumentan(mnt)と名づけた。外皮に影響する突然変異の多くは姿勢の受精能を低下させるのと対照的にmnt変異は雌性の受精能を低下させていない。つまり外皮の異常は、雌性の受精に障害をおよぼすのではない。mnt変異体においては種子のサイズと重さが劇的に増加していた。種子のサイズや重さの変化は、外皮が拡大することとでおこっていた。この変異の要因の一つは、mntの胚珠を囲む外皮内の細胞分裂が過剰に起こっていたためであることがわかった。またmntの変異は過剰細胞分裂や伸張を多くの器官で引き起こし、植物体や花の発達にも、多面的に影響を与えていた。

これまでにMNT 遺伝子のクローニングによりmntAUXIN RESPONSE FACTOR(ARF2)の対立遺伝子であることが示されている。ARF2はオーキシン制御遺伝子のプロモーターと結合することでオーキシン応答における遺伝子発現を仲介する転写因子のファミリーの一つである。本研究においてmnt変異体の表現型と遺伝子発現についての研究から、MNT/ARF2は細胞分裂と器官成長の抑制因子であるということが初めて示された。つまりARFはオーキシンによって調節される過程の一つである細胞分裂の一般的な抑制因子であるということが示された。またmnt変異体の表現型から、種子の最終的なサイズを決める上で、受精前の胚珠の成長が重要であることが示唆された。今後直接ARF2のターゲーットを同定することによって、ARF2の機能がより明らかにされるだろう。

 

ご興味のある方は是非御来聴ください。  河口優子